生成AIが「会話を理解している」と感じる納得理由 現時点でAIができることと、できないこと

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やり取りを終えた後で、審査員が人間と機械を区別することができなければ、その機械は「人間並みの知能を持っている」と判断する。これがチューリングテストです。

この判断は妥当なものでしょうか? 代表的な反論が、アメリカの哲学者ジョン・サールが提唱した「中国語の部屋」と呼ばれる思考実験です。

英語は理解できるが、中国語はわからない人間が、ある部屋にいます。その部屋には、「こういう文字列に対しては、こういう文字列を返せ」という完璧なマニュアルがあります。その部屋に中国語で書いた質問を入れると、なかにいる人は、意味はまったくわからないものの、マニュアルに従って、中国語で書いた回答を返します。これを部屋の外から見れば、「部屋のなかには中国語が理解できる人がいる」と解釈するでしょう。

つまり、やり取りができるからといって理解しているわけではないという、チューリングテストへの反論です。

生成AIは「中国語の部屋」と近い性質

生成AIは「中国語の部屋」と近い性質を持っています。生成AIは、確率に基づいて、それらしい言葉を順番に並べることで文章を生成しているだけです。

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本当に何もない無の状態から新しいアイデアを創造することは、AIにはまだできていません。いくらディープラーニングが人間の脳の仕組みを真似し、計算や認識などいくつかの分野で人間より得意なものが出てきているとはいえ、全領域でAIが人間を超えるシンギュラリティ(技術的特異点)を煽るのは、煽ることによって得をする批評家やメディアたちでしょう。ビジネスなど実務に携わる人たちは地に足がついた理解をしなければなりません。

生成AIはこれからも進化していき、間違った回答をしたりすることも減っていくでしょう。しかしそれでも、非常に優秀なアシスタントにはなっても、人間に代わる存在になると考えるのは時期尚早です。 

山本 康正 ベンチャー投資家、京都大学経営管理大学院客員教授

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やまもと やすまさ / Yasumasa Yamamoto

東京大学で修士号取得後、NYの金融機関に就職。ハーバード大学大学院で理学修士号を取得し、グーグルに入社。フィンテックやAI(人工知能)などで日本企業のデジタル活用を推進し、テクノロジーの知見を身につける。日米のリーダー間にネットワークを構築するプログラム「US-Japan Leadership Program」諮問機関委員。京都大学経営管理大学院客員教授。日本経済新聞電子版でコラムを連載。著書に、『シリコンバレーのVCは何を見ているのか』(東洋経済新報社)、『世界最高峰の研究者たちが予測する未来』(SBクリエイティブ)、『アフターChatGPT』(PHP研究所)、『テックジャイアントと地政学』(日本経済新聞出版)など。

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