CX-50投入もマツダが中国で直面する3つの課題 本気度見えぬBEVとガソリン車の値下げに懸念

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現在、中国では、295車種ものSUVが販売されており、そのうち月間販売台数2000台未満のモデルが全体の57%を占めている。ブランドが乱立し、差別化が困難な中国のSUV市場では、今年に入ってから値下げの動きが広がっている。

中国ブランドのSUVの一例、ヴェヌーシア T60(写真:Venucia)
中国ブランドのSUVの一例、ヴェヌーシア T60(写真:Venucia)

「SUV1台購入でセダン1台プレゼント」など、ディーラーが独自のキャンペーンを打ち出しており、販売台数を維持するために必死な様子がうかがえる。

全国の新車在庫(2023年6月末時点)は、14カ月連続で300万台を超えている。各社の値下げ競争を見極め、新車購入を控えている消費者も少なくない。さらなる値下がりを待つムードが広がると、新車市場に混乱をもたらすと懸念される。

中国自動車工業協会は、行き過ぎた価格競争に対し、メーカーの自制や消費喚起における地方政府の適切な対応などを呼びかけた一方、2023年7月6日には中国一汽、BYD、アメリカ・テスラを含む主要16社と、過度な価格競争を防止することに合意した。

今回の合意により、当面は価格競争が収束する傾向であるが、新車市場の熾烈な競争を勘案すれば、苦境脱出を図る自動車メーカーやディーラーが再び値下げすると予測される。

競合はフロントランダーやブリーズ

2つ目は、NEVブランドの攻勢と日系メーカー同士の競合だ。

日系SUVは、長距離走行を考慮する乗り心地やデザインなどが評価され、クルマの個性を重視する若年層の取り込みに成功した。しかし、中国SUV市場ではBYD「元」「宋」「宋Plus」、テスラ「モデルY」などのニューモデルが圧倒的競争力を構築している。日系SUVの人気モデルは存在感を示すものの、すでにNEVブランドに太刀打ちできない状況だ。

日本でもATTO 3の名で販売されるBYD 宋Plus(写真:BYD)
日本でもATTO 3の名で販売されるBYD 宋Plus(写真:BYD)

CX-50の日系競合車となるのは、トヨタ「フロントランダー」「RAV4」「ハイランダー」、ホンダ「CR-V」「ブリーズ」の5モデルで、これらが日系SUV販売のトップ5を占めている。特にフロントランダーのベーシックモデルは、CX-50より価格が約2割安く、2023年1~6月の販売台数は7.5万台を超えた。

今後、トヨタとホンダが値引き攻勢で販売台数を維持していくとなれば、マツダの新車販売に影響を与えると考えられる。仮にCX-50がさらなる値下げに踏み切ると、マツダのブランド力の低下やサプライヤーの収益低下の懸念が現実となるだろう。

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