インフレ苦の欧州で岐路に立つ「気候変動」対策 各国で募る不満、「反グリーン」政党に支持
イギリスでは7月20日、ボリス・ジョンソン元首相の議員辞職に伴う下院の補欠選挙がロンドン郊外の選挙区で行われ、与党・保守党の候補がわずか495票差で議席を死守した。
政権幹部による相次ぐスキャンダルや経済政策の失敗などが響き、保守党は各種の世論調査で、最大野党・労働党に20ポイント前後の大量リードを許している。下馬評では、同日行われた別の補選と同様に、保守党はこの選挙区も失うとの見方が支配的だった。
投票結果を左右したのは、労働党のサディク・カーン・ロンドン市長が進める環境政策に対する賛否だった。
排ガス規制をロンドン郊外に拡大
ロンドンの深刻な大気汚染が市民の健康被害を招いているとして、カーン市長は2019年に、環境基準を満たさない車がロンドンの中心部に乗り入れる場合、1日当たり12.5ポンド(約2200円)の料金支払いが必要な「超低排出ガス地域(ULEZ: Ultra Low Emission Zone)」を設置した。違反した場合、最大180ポンド(約3万2500円)の罰金が科せられる。
カーン市長は2022年11月、2023年8月29日から該当地域をロンドン郊外のほぼ全域に拡大することを発表し、ドライバーの反発を招いていた。
補選が行われた選挙区の住民は8月29日以降、通勤、通学、買い物、仕事などで基準適合外の車を使う場合、同額の支払いを命じられる。中心部と比べて公共交通機関が限られる郊外では、生活に車が必要な住民が少なくない。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら