インフレ苦の欧州で岐路に立つ「気候変動」対策 各国で募る不満、「反グリーン」政党に支持

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「環境基準を満たさない車」には、8年以上前のディーゼルエンジン車や18年以上前のガソリン車が該当する。近年、新車・中古車価格の高騰が顕著で、料金・罰金の支払いは車の買い替えが出来ない低所得層を直撃する。2021年に1万2982ポンド(約235万円)だった環境基準に適合する中古車価格の中央値は、現在1万8295ポンド(約330万円)と40%以上も値上がりした(英BBC)。

保守党候補は、超低排出ガス地域(ULEZ)の拡大が地域住民に多大な財政的な負担を強いるとして、労働党の環境政策を攻撃し、選挙戦の劣勢をひっくり返した。

補選の結果を受けて、労働党のキア・スターマー党首は、「労働党が議席獲得に失敗した原因はULEZにあった」とし、「この結果を受けとめ、今後の選挙戦に反映しなければならない」と発言した。カーン市長に対しても、ロンドン郊外へのULEZ拡大計画の何らかの再考を求めた。

アンジェラ・レイナ副党首も、「有権者の声に耳を傾けなければ、選挙に勝つことは出来ない」、「車の買い替えが必要な住民に対して、適切な補償や政策支援が必要となる」と発言した。

労働党・保守党とも気候変動対策の見直しへ

世論調査で劣勢の保守党議員の間からも、2024年の総選挙での保守党の逆転勝利を目指し、リシ・スナク首相が掲げる気候変動対策の見直しを求める声が浮上している。

政府は現在、2025年までに住宅新設時にガスボイラーを設置することや、2030年までにガソリン車やディーゼル車を新たに販売することを禁止する方針だが、この期限の先送りを提案している。また、政府は2028年以降、年間で60万戸の住居にヒートポンプを導入することを目指しているが、より現実的な目標を設定すべきとしている。

こうしたグリーン政策を巡る政治的な波紋は、イギリス以外の欧州諸国にも広がっている。

7月23日に投開票が行われたスペインの下院総選挙では、ペドロ・サンチェス首相が率いる中道左派の与党・社会労働党(PSOE)が、中道右派の野党・国民党(PP)に第一党の座を明け渡した。

今回の選挙戦では、移民の受け入れや現政権の進歩的な社会政策に批判的な極右政党・ボックス(VOX)が次期政権に加わるかどうかが大きな注目材料だった。スペインでは1970年代の民政移管後、極右政党が国政レベルで政権に加わったことはない。

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