インフレ苦の欧州で岐路に立つ「気候変動」対策 各国で募る不満、「反グリーン」政党に支持

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6月末には旧東ドイツのテューリンゲン州のゾンネベルク郡の選挙で、AfDの候補が決選投票を制し、首長に選出された。国政・州・郡・市町村レベルを通じて、AfDが首長を輩出するのは初めてで、ドイツ政界に激震が走った。

このままAfDの支持拡大が続けば、州レベルや連邦レベルでも、AfDとの協力なしで政権を発足することが徐々に難しくなっていく。

CDUのフリードリヒ・メルツ党首は7月23日、郡や市町村レベルでAfDとの協力の可能性を排除しない旨の発言をし、党内からの反発が広がり、火消しに追われた。ドイツ政界におけるAfDの存在感が増しており、もはや政治的に排除することが難しくなりつつある。

欧州各国で政治イベントが目白押し

総選挙後の政権発足が難航しそうなスペイン、連立政権が崩壊したオランダでは、2023年の秋から冬にかけて総選挙が予定される。気候変動対策に異を唱える政党の躍進に注意が必要となる。

2024年秋にはドイツで、気候変動対策に懐疑的な右派ポピュリスト政党が高い支持を得る旧東ドイツの3州(テューリンゲン州、ザクセン州、ブランデンブルク州)で州議会選挙が予定される。

イギリスでは2025年1月に議会任期満了を控え、2024年中に総選挙が行われる可能性が高い。7月の補選の結果を受けて、保守党と労働党の二大政党が気候変動対策をどう位置付けるかに注目が集まる。

2024年央の欧州議会選挙でも、前回2019年の選挙で躍進した環境会派やリベラル会派にかつての勢いはない。選挙結果を踏まえたEUの次期執行部の人選も、欧州の気候変動対策の行方を左右しよう。

物価高騰による生活困窮が続くなか、欧州各国で急進的な気候変動対策への揺り戻しが起きている。2023年から2024年にかけては欧州各国で政治イベントが目白押しで、その過程で気候変動対策の軌道修正につながる可能性に注意が必要となろう。

田中 理 第一生命経済研究所 首席エコノミスト

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たなか おさむ / Osamu Tanaka

慶応義塾大学卒。青山学院大学修士(経済学)、米バージニア大学修士(経済学・統計学)。日本総合研究所、日本経済研究センター、モルガン・スタンレー・ディーン・ウィッター証券(現モルガン・スタンレーMUFG証券)にて日、米、欧の経済分析を担当。2009年11月から第一生命経済研究所にて主に欧州経済を担当。

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