インフレ苦の欧州で岐路に立つ「気候変動」対策 各国で募る不満、「反グリーン」政党に支持
BBBは農家による抗議活動を源流とした政党で、生物多様性にとって有害な窒素排出量を削減するため、家畜の数を減らし、農場の閉鎖を進める政府の計画に反対している。政府は2030年までの循環型農業の実現に向け、家畜数や農場数を減らすか、別の形で気候変動対策に貢献することを求めている。
農業保護以外の政策分野でBBBは、右派ポピュリスト的な主張が目立つが、極右政党の自由党(PVV)や民主主義フォーラム(FVD)ほど極端ではない。
オランダの欧州連合(EU)への参加を支持するが、EUの権限を縮小し、加盟国の権限拡大を求めている。同党は紛争や迫害から逃れる難民の受け入れを支持するが、移民の経済的な自立やオランダ語の習得を要求する。
ドイツの極右躍進は思想が要因ではない
気候変動対策への不満は、環境大国のドイツでも広がっている。
7月22日に発表された調査会社INSAの世論調査で、極右政党・ドイツのための選択肢(AfD)が過去最高の22%の支持を得て、前回の連邦議会選挙で下野した最大野党・キリスト教民主同盟(CDU)に4ポイント差に迫る2番手に付けた。
欧州債務危機時に旗揚げされ、難民危機時に反移民や反イスラムを掲げて支持を拡大したAfDの最近の更なる躍進は、ドイツで極右思想の持ち主が増えているからではない。
2022年の連邦議会選挙を受けて誕生したオラフ・ショルツ首相が率いる中道左派の社会民主党(SPD)、環境政党・緑の党(Grüne)、リベラル政党・自由民主党(FDP)の3党による連立政権の支持は、低空飛行を続けている。
物価高騰による生活困窮、2024年から石油・天然ガスを使用する暖房設備の新規設置を禁止する政府方針への反発、連立政権内の主導権争いや足並みの乱れなどを背景に、有権者の支持離れにつながっている。
AfDはこうした連立政権への批判票を取り込むとともに、ウクライナでの紛争長期化に伴う難民・移民の増加、脱炭素社会への移行に伴う家計負担の増加を巡る懸念を支持拡大につなげている。
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