小田急線の「要衝」相模大野、知られざる駅の裏側 人に例えると心臓?肝臓?商業施設が入る巨大駅
一方、巨大な駅ビルの“裏側”には駅事務室のほか、食堂兼休憩所、更衣室、寝室、浴室といった外からはうかがい知ることができないスペースが広がっている。駅員は同じ管内の東林間、小田急相模原で勤務する人数を合わせて約70人。基本的に24時間勤務で9時半に出勤、翌日の9時半に交代するため、バックヤードに生活ができる機能が備わっている。
さらに信号所がある。信号扱者(あつかいしゃ)の経験が長かった藤田副駅長は「相模大野の信号所は運転の要で一番難しい。遅延を発生させてしまうと全線に遅れが波及してしまう一方、ここで収束させることもできる非常に重要な場所」と説明する。
まさに小田急線の要衝といえる相模大野駅の周辺にはさまざまな鉄道の重要施設が集中している。小田原方に隣接する大野総合車両所は、全般検査や重要部検査といった電車を分解した大がかりなメンテナンスを手がける。経堂と相武台にあった工場を統合する形で1962年に開設した。運輸司令所や電気司令所も大野にある。
海老名に負けていられない?
また、喜多見、大野、海老名、足柄の4カ所ある乗務員区所のうち、大野電車区・大野車掌区にそれぞれ約130人の運転士・車掌らが所属している。電車区の梅津満区長、車掌区の猿田高士区長は「大野は総合車両所がある関係で、ほかの区に比べると突発的な試運転を担当することが多い」と口をそろえる。
猿田区長はJR線で運んできた新造車両の「甲種輸送」の誘導にもよく携わった。JRの連絡線がある新松田から相模大野まで機関車が牽引、工場へは方向を変えて押して入れる。「作業しやすい場所にぴったり付けるために運転士と呼吸を合わせ、10cm、20cm動かすのがけっこう大変だった」と振り返る。
梅津区長は「大野を人間の臓器に例えるなら肝臓かなと思う。いちばん大きくて働き者。少々のダメージにへこたれない強い再生機能がある」と話す。そのうえで「正直、最近は(本社機能が一部移転した)海老名に押されているなと感じるところがあるが、要である大野エリアを盛り上げていきたい」と意気込む。管区長は心臓、電車区長は肝臓と、例え方はそれぞれだが、小田急のキモであることは間違いなさそうだ。
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