「気候変動リスク」に無関心な企業は淘汰される 「世界資源エネルギー問題」は経営の必修知識
現在世界のエネルギー政策は、大きな転換点にあります。本書では、明治時代に石炭輸出国であった日本が、石炭から原油へのエネルギートランスフォーメーションに出遅れ、十分な計画がないまま第2次世界大戦へと突入していった経緯を述べています。世界の情勢を知り、適切な政策を選択しなければ、国の存続も危うくなると筆者は警告しています。
脱炭素化に20兆円の投資
今年5月に通常国会で成立した「GX推進法」は日本の政策にとって重要な分岐点です。同法の下、政府は今後10年間に、脱炭素化のため総額20兆円の投資を行い、その資金を回収するためにカーボンプライシングを段階的に導入していきます。
GX推進法の方向性は正しいと思われますが、20兆円が効果的な投資に向けられるのか、国民はしっかりとモニターしていかなくてはなりません。
また気候変動対応の一環として、22年8月にアメリカでは、「インフレ抑制法(IRA)」が議会で成立しました。同法は、税控除や補助金等を通じて約52兆円を投じてエネルギー安全保障や気候変動の分野に支援を行うという内容です。
EUでは、2023年4月に環境規制の緩い国からの輸入品に事実上の関税を課す「炭素国境調整措置(国境炭素税)」が導入されました。今年10月からEUへ輸出する企業は製品の二酸化炭素(CO2)排出量の報告が義務づけられ、2026年以降の本格導入後は資金を払うことも求められます。どちらも日本企業や世界貿易に大きな影響を与える制度です。日本政府および企業は、こうした制度が自由貿易や公平性の観点に照らして問題がないのか、意見を述べることも必要です。
いずれにしても日本は、経済成長とネットカーボンゼロの達成を実現するために、官民協調して情報収集力、分析力、交渉力を高め、また世界に貢献していくことが求められています。
世界の資源エネルギー事情は、すでに「教養科目」ではなく、「必修科目」となっていることは確かです。
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