日本交通、「動画視聴で50円割引」の狙いは? 拾われるタクシーから選ばれるタクシーへ

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一方、タクシー側はクーポンという形で、「値引き」を行うことで、タクシーの利用頻度が低い20代や主婦層などを取り込みたい考えがある。「日本のタクシーの問題の一つは運賃が高いこと。一方、実車率は1980年代のピーク時の55%から直近41%まで下がっている。そこで、アプリを使ってここに風穴をあけられないか考えた」(日本交通)。

タクシー会社が自ら値下げすることは規制違反にあたる。しかし、今回は日本交通のグループ会社である、データサービス会社経由でアプリを提供しているほか、広告主が「値下げ分」をまかなっていることになるため、規制違反にはあたらないという。日本交通では、実証実験の結果を見て黒タク3400台を対象に、サービスを本格化する予定だ。

同社が率先して、アプリ配車に力を入れる背景には、日本のタクシー業界を囲む環境変化がある。

拾われるタクシーから選ばれるタクシーに

上記の通り、輸送人員の減少により、実車率は右肩下がり状態で、タクシー会社間の競争は激化している。こうした中、「拾われるタクシーから選ばれるタクシーに変わっていかなければならない」(日本交通)との危機感がある。また、タクシー自体の実車率は減っている一方で、今後は訪日外国人や高齢者などの輸送需要が増えることも予想される。ただ、こうした新たな需要を取り込むには、従来とは違う販促やサービスを展開する必要があるというわけだ。

日本交通の今回の取り組みは、他のタクシー会社にも影響を与えそうだ(写真は日本交通のホームページより)

タクシー配車アプリは、世界的にも注目を集めているサービスの一つだ。欧米では米国初のUber(ウーバー)やLyft(リフト)などが先行しているが、アジア地域では、地元ベンチャー企業やタクシー会社による同様のサービスが次々と生まれている。とりわけUberは、タクシーが捕まえにくかったり、安全性に問題があったりする地域などで、爆発的に利用者を増やしている。

日本においても、2014年3月からUberが運用を本格化させているほか、これに先駆けて日本交通もアプリ配車を始めていた。また、同社の川鍋一朗社長が会長を務める、東京ハイヤー・タクシー協会も配車アプリ「スマホdeタッくん」を提供しているなど複数のアプがある。最近では、日本交通がLINEと提携して、LINEの独自サービスで日本交通のタクシーを呼べるようにするなど、タクシー業界以外と組むケースも出てきた。

タクシー会社間の競争が激化する中、全国で提携タクシー会社を増やす一方で、クーポンを使った「値引き」という「ウルトラC」を打ち出した日本交通。はたしてライバルたちはどのように見るだろうか。

倉沢 美左 東洋経済 記者

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くらさわ みさ / Misa Kurasawa

米ニューヨーク大学ジャーナリズム学部/経済学部卒。東洋経済新報社ニューヨーク支局を経て、日本経済新聞社米州総局(ニューヨーク)の記者としてハイテク企業を中心に取材。米国に11年滞在後、2006年に東洋経済新報社入社。放送、電力業界などを担当する傍ら、米国のハイテク企業や経営者の取材も趣味的に続けている。2015年4月から東洋経済オンライン編集部に所属、2018年10月から副編集長。 中南米(とりわけブラジル)が好きで、「南米特集」を夢見ているが自分が現役中は難しい気がしている。歌も好き。

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