富士通、マイナ誤交付で揺らぐ「IT最大手」の足元 システム障害が頻発、大規模組織再編が遠因か
誤交付が生じた自治体の間では、横浜市が1カ月、東京都足立区が3カ月間、富士通Japanを指名停止処分とし、入札に参加できなくするペナルティを課した。
富士通グループにとって、官公庁向けの案件は全社売り上げの2割前後を占めているとみられ、重点領域の1つだ。ただ、今回の一連のトラブルが業績に与えるインパクトは限定的との見方が多い。
富士通の株価は、マイナカードの不祥事が発覚した4月以降も横ばい圏で推移しており、大きく悪材料視はされていない。三菱UFJモルガン・スタンレー証券の田中秀明シニアアナリストは「IT投資が活気づく中で、ITベンダーの需給は逼迫している。『富士通外し』をする動きは起きにくい」と分析する。
とくにIT人材に乏しい自治体では、既存ベンダーから容易に切り替えられない「ベンダーロックイン」状態に陥っているケースが多い。公正取引委員会が2022年、約1000に及ぶ国の機関や自治体を対象に実施した調査では、99%弱の官公庁が過去に既存ベンダーと再契約する事例があったと回答。その理由として「既存ベンダーしか既存システムの機能の詳細を把握することができなかったため」との回答が最多で、全体の48%を占めた。
富士通と走り続けるしかない
今回の問題が起きた市町村の中には、もともと富士通製の基幹システムを利用しているなど、コンビニ交付システムを導入する以前から、富士通と契約関係にあった自治体もある。こうした状況下で、即座に別の業者のシステムへ切り替えることは困難が付きまとう。
ある自治体関係者は「現在使っているベンダーの担当者がいなければ、自分たちのシステムがどうなっているのかわからなくなってしまう」と打ち明ける。誤交付が起きた自治体の職員は「とりあえず契約期間中は、富士通と一緒に走り続けるしかない」とあきらめ顔だ。
目先の業績に大きな影響を与えないとはいえ、今回のトラブルでは前述の通り、点検後も誤交付が発生するなど、ガバナンス体制すら問われるような問題が浮き彫りとなった。マイナカードに限らず、富士通ではこの数年、システムに関連した不祥事が立て続けに起きている。
2022年には、企業向けインターネットサービス「FENICS」でサイバー攻撃を受けたことが原因となり、企業や官公庁など約1700組織の情報が漏洩する事態を招いた。富士通自身がサイバー攻撃を受けたことに8カ月も気が付かないなど、セキュリティ対策に重大な欠陥があったことも判明していた。
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