JR西、新幹線500系の延命を占う「小さな改造」 デビューから四半世紀、いつまで走り続けるか

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こだまでの運用が始まってから10年あまりを経て、500系8編成のうち2編成が廃車された。現在も走り続けているのは6編成にすぎない。初登場から26年経っていることもあり、その6編成もそろそろ引退するのではないかという観測もある中での行き先表示器のバージョンアップである。

フルカラーLEDの行き先表示器は従来よりも見やすいが、だからといって、変えなくてはいけないというものでもない。部品の調達や作業の手間を考えれば、そのコストは決して安くはない。もし設備投資として行われたのであれば、今後数年間にわたって減価償却費として費用計上される。もし引退が迫っているのであれば従来のものを使い続けていていいはずだ。

行き先表示器をバージョンアップしたということは、500系の引退は当分の間はないということか。JR西日本の長谷川一明社長にこの点について聞いてみると、行き先表示器のフルカラーLED化と車両運用期間の関連性については明言しなかったものの、「500系はいずれ引退するだろうが、こだまでならまだ使える」として、しばらく使い続けることを明言した。

乗ってもらうには「コラボが必要」

現在、山陽新幹線のこだまは700系も走っているが、「わざわざ500系を選ぶお客様もいる」と長谷川社長は述べる。それだけ、鉄道ファンの間で人気が高いのだが、それが、乗車率として目に見える実績を出しているかというと、そこまでではないようだ。「500系単体では多くの人には乗っていただけない。エヴァンゲリオンやハローキティのようなコラボレーションが必要だ」。

2015年にはアニメ「新世紀エヴァンゲリオン」とコラボした列車を走らせた。車両外観を「エヴァンゲリオン初号機」をモチーフとしたカラーリングに全面塗装し、大好評を博した。2018年にはサンリオのキャラクター「ハローキティ」とコラボした新幹線が世界中で話題に。ピンクと白のカラーリングの列車が現在も山陽新幹線区間を走行する。

そのハローキティ新幹線もデビューから5年。500系との新しいコラボ列車が登場してもいい頃合いかもしれない。ハローキティ新幹線は山陰デスティネーションキャンペーンに合わせて投入されたが、もし次のコラボ新幹線が登場するとしたら、やはりデスティネーションキャンペーンの時期に合わせるのだろうか。いずれにしても500系の引退がまだ先の話ということであれば、これからも500系をさまざまな施策に活用できる。世界の高速鉄道の歴史に残る名車であり、ぜひそれにふさわしい施策を行ってもらいたい。

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大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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