小野寺五典氏「ウクライナの惨状が専守防衛の姿」 「なぜ、反撃能力が必要か」防衛3文書策定の意図

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塩田:核大国のロシアは戦術核兵器の使用の可能性をちらつかせています。その点も踏まえ、核抑止力についてお尋ねします。日本には非核3原則があり、核拡散防止条約に加盟していますが、現下の状況で、日本は何をどうすべきですか。

小野寺:国際社会がどういうふうに動いていて、安全保障環境がどうか、しっかり認識を持つべきだと思います。今年5月にワシントンに出掛ける機会があり、ちょうどそのときにジョー・バイデン大統領と韓国の尹錫悦大統領が会談して両国でワシントン宣言を出した。アメリカの政府から聞いて驚いたのですが、尹大統領はアメリカの核爆弾を韓国に置いてほしいと繰り返し強くお願いしたそうです。

核武装に対する世界のトレンド

小野寺:韓国の世論調査では「韓国は核武装すべき」が75%に達している。すでにドイツやイタリアもアメリカの核爆弾を自国内に置いていて、いざというとき、アメリカの了解があれば、ドイツの爆撃機がその核爆弾を積んで自ら核攻撃する。その準備を日ごろからしているんです。残念ながらこれが世界の現実です。核が使われる蓋然性が高くなってきて、そのために抑止が必要ということになった。

韓国国内で起きている議論は、北朝鮮が本格的に韓国を攻撃したとき、本当にアメリカは、核を持っている国に一緒に立ち向かってくれるのかどうかです。今回のウクライナ侵攻を見て、そういう疑いが出てきた。だから、韓国自身も核抑止のために自国内に核兵器を持とうとしている。実は世界のトレンドはこちらに動いています。私ども安全保障の担当者は、世界の潮流、動きをより敏感に日本国内に伝えることが必要です。

塩田:岸田首相は広島選出です。核の問題について、どうお考えでしょう。

小野寺:将来に核兵器のない世界に、核をなくすことが大事だと明確に意識しています。でも、現実的には日本は今、アメリカの核の傘にある。その中で核を否定できない。これが私は岸田総理の一貫した考え方で、私たちも同じだと思っています。

塩田 潮 ノンフィクション作家、ジャーナリスト

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しおた うしお / Ushio Shiota

1946年、高知県生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科を卒業。
第1作『霞が関が震えた日』で第5回講談社ノンフィクション賞を受賞。著書は他に『大いなる影法師―代議士秘書の野望と挫折』『「昭和の教祖」安岡正篤』『岸信介』『金融崩壊―昭和経済恐慌からのメッセージ』『郵政最終戦争』『田中角栄失脚』『安倍晋三の力量』『危機の政権』『新版 民主党の研究』『憲法政戦』『権力の握り方』『復活!自民党の謎』『東京は燃えたか―東京オリンピックと黄金の1960年代』『内閣総理大臣の日本経済』など多数。

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