岸田首相は安全保障政策の転換を衆議院解散の大義に掲げるべきだが、防衛費問題が足かせになりかねない。
通常国会は「衆議院解散なし」で閉会となり、政治の焦点は8~9月の内閣改造・自民党役員人事、9月以降の臨時国会での岸田文雄首相の解散再挑戦という「秋の陣」に移った。
首相の解散意欲は本気だったようだ。前回の衆院選からわずか1年8カ月なのに、実施に前のめりになった狙いは、何よりも2024年9月に予定される自民党総裁選での再選だったと思われる。だが、一度、解散権を振り回した後、会期末近くに「不行使」を自ら明言するというエラーを犯した。
内閣支持率の回復、G7広島サミット(主要7カ国首脳会議)開催、野党側の選挙準備の遅れなどを見て勝利の好機と判断したに違いない。とはいえ、「前向き、一転、撤退」という迷走を演じると、逆に政権弱体化は必至だ。にもかかわらず、なぜ解散見送りを選択したのか。「『緊張感のある政治』を狙って解散風を吹かしてみただけ。解散権の影響と効果を実感できた」という声も伝わったが、強がり、負け惜しみと映る。
4つの誤算で解散見送り
実際は外交実績などを帳消しにする「4つの誤算」に直面したからだ。第1は長男の首相秘書官辞任、第2は候補者調整をめぐる自民党と公明党の亀裂、第3はマイナンバーカードと健康保険証の一体化をめぐるトラブルの続発、第4は性的マイノリティーへの理解を広めるLGBT理解増進法の拙速成立だ。このまま7月総選挙に突入すると、「自民党は40議席以上の減も」という予想が流れた。
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