自民党が担ってきたバランス重視の保守政治は変質。旧統一教会との癒着もその凋落を助長する。
毎年、2つの原爆忌から終戦の日までの10日間は、戦後日本の来し方行く末について思いを致す省察(英語でいうsoul searching)の機会である。しかし、岸田文雄首相が予想外に早く内閣改造、自民党役員人事を行ったために、政局をめぐるドタバタの中でこの時期を過ごした。このことは自民党が担ってきた保守政治の変質の反映である。
また、安倍晋三元首相殺害事件で明るみに出た自民党と旧統一教会との不明朗・不可解な癒着も、保守政治の凋落を進めるのではないか。
保守主義とは、単一のイデオロギーに耽溺(たんでき)することの害を警戒し、現実世界を構成するさまざまな要素に目配りしながら、漸進的に物事を解決するという発想である。自民党による長期政権が可能になったのも、この党がさまざまな意味でのバランスを取ってきたからである。
岸田政権に求められるバランス
バランスの第1は、国家権力と国民や社会とのバランスである。自民党には滅私奉公を懐かしむ復古派もいたが、自民党政治そのものは人々の私的な利益主張を前提としつつ、それを調整し、社会統合を図ることを主たる任務としていた。第2は、経済発展と国民生活のバランスである。戦後日本の経済発展は企業部門における富の創出を最優先してきたが、自民党はそうした富を成長から取り残された部門に再分配することを主たる任務としてきた。
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