モデルがない以上、日本の特殊性を生かした独自のグランドデザインを目指すしかない。
岸田文雄内閣の新しい資本主義実現会議の動きが鈍いという報道が出ている。どこに着地するのか見えないというのである。
グローバル化の中、資本主義経済が地球規模で格差を拡大させ、各国の政治の分極化を招いた。これに対して必ずしも有効な策はない。とはいえ、諸外国では理念のうえで新しい方向性を出そうとしているのも確かである。そこでの特徴は、取り立てて共通の方向性がないことである。つまり、資本主義に問題があったとしても、有効な処方箋がどこからか出てくるわけではない。実現会議の行き詰まりは突き詰めるとそこにある。
これは、岸田首相が安倍晋三・菅義偉政権から政権を継承した中で、これまでとはまったく別の新しい政策を掲げるときに生ずる課題である。本来ならば、菅政権がそうした政策の方向性を出すべきであった。だが菅首相は成果を出すことを焦り、デジタル化、携帯電話料金値下げ、ワクチン接種といった個別の政策にはこだわったものの、グランドデザインとしての政策の方向性を出すことはなかった。菅首相自身が前政権の官房長官を長らく務めていたため、政策を刷新するのは実質的にも難しかった。
これに対して岸田政権は、新型コロナウイルス感染症対策で安倍・菅首相が国民の信頼を失った後に誕生した。これまでの政権とは異なる政治姿勢を取ることは、国民が期待するところであった。安倍・菅政権の長期にわたる印象が強い中、同じ自民・公明党連立という枠組みの下で、いかに新味を出すかが問われている。
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