小野寺五典氏「ウクライナの惨状が専守防衛の姿」 「なぜ、反撃能力が必要か」防衛3文書策定の意図

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塩田:2013年12月に安倍内閣が決定した国家安全保障戦略には、「本戦略の内容は、おおむね10年程度を念頭に置いたものであり」という記述があります。2022年12月決定の3文書改定の1つである国家安全保障戦略は、この改定時期に合わせて策定されたのですか。

小野寺:いや、違います。実は2013年の国家安全保障戦略も、当時の安倍総理、菅官房長官、岸田外相、私の4人で作っていて、私だけでなく、岸田外相も、ある面で中身が現状に合っていないと感じていたと思います。それで2021年12月から始めたのですが、そのときは、そんな能力を持ったら危ないのではとか、防衛費増額の前にすることがあるのではとか、世論にもまだいろいろな声がありました。大きな転機になったのは、2022年2月からのロシアのウクライナ侵略です。あれで日本の国民のほうが気づいたと思います。

現実は、相手が弱いと思われたら戦車を使って攻め込んで、抵抗する市民を殺害していく。これが今の時代でも起きているのをまざまざと見た。私どもがずっと言ってきたことが、より信頼性を持って受け止められ、それで今回の文書の承認に至ったと思います。

岸田首相のリーダーシップ

塩田:岸田首相は「現実主義的対応」が信条ですが、その点でのリーダーシップは。

小野寺:全くリーダーシップを持っています。「やりなさい」と言ったのも、できたものを受け取って「やります」と言ってやってくれたのも、岸田総理です。それで私どもが具体的に党の考えをまとめ、連立与党の公明党とワーキングチームを作って、私が座長で理解をいただく内容に仕上げたということです。

塩田:「反撃能力」という言葉は、小野寺さんの発案だそうですね。

小野寺:こちらからの攻撃について、「打撃力」とか「策源地攻撃」とか、いろいろな言葉があったのですが、どれもしっくり来ないと思った。どういう言葉にするか、難しかったのです。政府の政策にした場合、周辺国に配慮する必要がある。間違って伝わると、「軍国主義化する日本」と悪宣伝に使われかねない。英語で何が一番妥当か、考えました。

外務省とも相談したら、「カウンターストライク・キャパビリティ(counterstrike capability)」 が最も常識的な言葉だろう、と。「先制攻撃」は国連憲章で否定されています。その中での考え方ということで、日本語に直し、反撃能力にした。岸田総理にご説明すると、「うーん、まあそうかな」という感じでご理解いただいたと思います。

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