小野寺五典氏「ウクライナの惨状が専守防衛の姿」 「なぜ、反撃能力が必要か」防衛3文書策定の意図

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塩田:2022年12月決定の国家安全保障戦略では、「専守防衛に徹し、非核3原則を堅持するとの基本方針は今後も変わらない」と表明する一方、「戦後の我が国の安全保障政策を実践面から大きく転換する」と唱えて「反撃能力を保有する必要がある」と認めています。矛盾する内容を含んでいると受け取る人もいるのではないかと思いますが。

小野寺:憲法の解釈では、自衛の能力を持つこと自体は憲法に違反しないということなので、反撃能力を持っても、専守防衛という考え方には抵触しないと思います。

専守防衛で日本を守るには、以前は飛んできた戦闘機や爆撃機を日本の領空に入ったときに撃ち落とすとか、近寄ってきた軍艦を日本の領海に入って攻撃してくるのであれば攻撃するとか、いわば「待っていて攻撃する」という戦いでした。

技術的な変化で、今の具体的な戦争は、相手の領土から直接、ミサイルが飛んでくる。以前は近寄ってきて食い止めても間に合ったのですが、今は撃たれたらすぐに食い止めるか、撃つ前に食い止める。相手の領土にあるものを攻撃して無力化するしかない。これは日本を守るために防衛としては何も変わっていないスタンスで、専守防衛の範囲に入ると思います。

ウクライナの惨状が専守防衛の世界

塩田:小野寺さんは都内での講演で、「ウクライナの現実が専守防衛の世界」と話していますが、専守防衛の方針は再考すべきだというお考えはありませんか。

小野寺:私は自民党の議員ですから、憲法改正が必要だと思っている1人です。ですが、今の憲法の範囲であれば、専守防衛をかなり重い考えとして受け止めて対応せざるをえないので、自衛隊の反撃能力に関しても一定の制約が出てきます。

ただウクライナの現状を見ると、専守防衛をしている限り、多分、最終的にウクライナに勝利はないと思うんです。あるとすれば停戦ですが、停戦のきっかけは、ウクライナが「勘弁してくれ」と言うか、ロシアが「これ以上攻めるのを許してやるよ」と言うか、こういう形しかない。ロシア国内への攻撃ができないとすると、一方的にやられ尽くしていくしかない。

これはリアルな姿として国民によく理解していただく必要がある。ですから、敢えて1つの例として、「ウクライナが専守防衛の国。今、殺されている民間人はみんなウクライナの人、壊されている町はみんなウクライナの領土」と説明しています。

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