小野寺五典氏「ウクライナの惨状が専守防衛の姿」 「なぜ、反撃能力が必要か」防衛3文書策定の意図
小野寺:昨年末に防衛3文書をまとめましたが、きっかけは安保環境の大きな変化。1つは中国とロシアがタッグを組むようになったことです。「30大綱」のときは、ロシアとはまだ「安倍・プーチン」の関係でよかったのですが、今はむしろ日本と敵対する関係に。現在は中ロのタッグと日本は向き合わなければいけない。
加えて、戦争の仕方が変わった。2014年にロシアが初めてウクライナを侵略したとき、ハイブリッド戦を行いました。今後の戦いは戦車や飛行機やミサイル攻撃の前にサイバーや宇宙領域の妨害から始まる。このように安保環境の変化と戦争の変化に合わせて大綱を見直す必要があり、今回、3文書を取りまとめるに至ったということです。
塩田:2022年12月決定の防衛3文書の策定作業はいつから始まったのですか。
小野寺:2年ほど前です。考えていたのは菅義偉内閣のときで、辞められた安倍元総理と意見交換して、「中ロがタッグを組む状況になり、戦い方が大きく変わったので、見直さなければ」と話をしました。実際には、その後、岸田文雄内閣となってすぐに総理から「この戦略を見直す」と言っていただいた。岸田総理は現実的な対応を考える人ですから、長年、外務大臣をされ、短い期間でしたが、防衛大臣もして、今の安全保障環境であれば、戦略を変え、予算を増やすのは仕方がないことだという考えだったと思います。
「反撃能力」を政府案として採用
小野寺:2021年の12月ぐらいから、キックオフということで、具体的に党内で議論をスタートさせました。初めは有識者からヒアリングをした。アメリカからもいろいろな人に来てもらって意見を聞きました。日本のサイバー分野での能力の低さを指摘され、それに合わせて要点をまとめました。その過程で、サイバー分野でも反撃による抑止力を高めることが必要と考えました。
さらに、実際の防衛装備においても変革が必要です。ミサイル防衛では、相手のミサイルを撃ち落とします。しかし、すごい技術と莫大な予算が必要で、これを追い続けたら国が破綻してしまう。であれば、ある程度の防衛力は持ちますが、そこから先はむしろこちらから反撃する。それによって抑止力を高める。この現実的な対応を取らざるをえない。そう思って「反撃能力」という言葉を作り上げ、政府の案として採用していただいた。
それから、自衛隊の能力を高めたいと考えた。防衛大臣として現場を回ると、戦闘機や車両などの装備品の稼働率が低くて、具体的に動く装備が少なくなっていて、非常に心配な気持ちになったので、それをしっかりやっていこうというところから始めました。
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