バス転換の留萌本線、「鉄道代替交通」は前途多難 廃線直後に鉄道代替バス路線存廃協議の衝撃

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留萌本線の代替交通の概要がJR北海道から発表されたのは廃線の直前となる2月17日のことで、それまで住民には知らされなかった。既存のバス路線、沿岸バス留萌旭川線を鉄道代替交通とするもので、新たに設定されたものは、早朝夜間の予約制乗合タクシーと、羽幌―留萌―旭川間を高規格道路深川留萌道経由で結ぶ高速バス1往復のみで、いずれの代替交通も最大で3年間の期限付きだ。

留萌旭川線のバス路線を運行する沿岸バスでは、留萌本線の廃止から1カ月を経ないうちに留萌旭川線のバス路線について著しい赤字を理由に関係自治体と存廃協議を行っていることを公表。しかし、沿岸バス本社に問い合わせたところ、「留萌旭川線は、たまたま旧留萌本線と路線が並行しているだけで鉄道代替バスという認識はない。高規格道路経由の高速バスについてもJR北海道からの拠出金を原資に留萌市から委託を受けて運行しているが鉄道代替バスという認識はない。電話取材には応じられない」という話で、留萌旭川線の路線バスを留萌本線の鉄道代替交通としたJR北海道や留萌市の発表内容とは食い違う。ドライバーの現状についても聞いてみたが「10年後を考えると現状を維持できるか不安はある」との回答だった。

一方で、早朝、夜間便の予約制乗合タクシーを運行する小鳩交通留萌営業所は、「メインの利用者はこれまで留萌本線で通学を行っていた学生である」が「留萌市の計画による期限付の便については、それ以降の運行に関しては未定」だという。

石狩沼田までは3年間存続も町長は危機感

沼田町の横山茂町長は「バスで簡単に鉄道の代替交通を担える時代ではなくなった」と危機感を強める。

沼田町の横山茂町長(筆者撮影)

石狩沼田駅のある沼田町は、最後まで留萌本線存続の立場を取り、鉄道ルネサンス構想と名付けられた「JR北海道の全路線が乗り放題となる月間あるいは年間の定額会員制パス―いわゆる鉄道サブスクパス―の実用化による利用促進」を提唱。JR北海道や北海道庁、自民党の国会議員で構成される「地域公共交通の活性化及び再生を目指す議員連盟(2021年11月当時)」などへの提案活動を続けてきた。

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