部品在庫払底の電機業界、「5月危機」の深刻さ

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 ルネサス系の半導体商社は「抱えている在庫は1・5カ月分だから、5月には完全に払底する」と覚悟する。顧客から問い合わせがあれば、型番の変更などを提案する方針だが、「半導体を変えると、組み込みソフトウエアも対応させる必要がある」。部品変更の認証作業に1年以上かかる自動車と異なり、電子関連は変更が比較的容易だが、それでもソフトの書き換えや検証作業には数カ月が必要だという。

ルネサス以外の半導体メーカーも同様だ。基礎部材のシリコンウエハ、洗浄工程で使用する過酸化水素などの工場が被災したことで、原材料の品薄感が高まっている。調査会社アイサプライの南川明副社長は「年内はサプライチェーン(供給体制)の混乱が続きそう。2011年は日本の半導体売上高が1~2割落ち込む可能性がある」と予測する。

自動車や電子機器に搭載されるアルミ電解コンデンサーにも供給不安がくすぶる。最大手の日本ケミコンは主力の高萩工場(茨城県高萩市)が被災、今は新潟工場(北蒲原郡)の稼働率を上げて対応している。組み立て工程ではマレーシアや中国の設備を増強するが、元の水準に戻るには数カ月かかりそうだ。代わりにライバルでシェア2位のニチコンが、2~3割の大幅増産に乗り出した。「早くも自動車メーカーからの問い合わせは増えてきている」。

部品点数が少ないコンパクトデジタルカメラさえ、約800点の部品が必要だ。すでにキヤノンなどは工場で生産調整中。比較的、厚い在庫を保有する海外のカメラ工場に波及するのも、時間の問題だろう。

1社発注の見直し必至 海外が日本から奪うか

一つ部品が足りないことで自動車や家電製品を生産できない、サプライチェーンの危機。今度は反対に、完成品の供給が絞られることで部品の生産に支障を来すという、“逆流”現象が起こり始めている。

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