人間同士の「対立」が激しくなっている納得の理由 人と同じものが欲しくなる模倣の欲望の仕組み

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例えば、パンデミックの最中、私はSNSを見ていて、とても素敵なバンで国内を旅行し、至る所で美しい写真を撮っている人たちのインスタグラムストーリーを見まくっていて、ある時妻のクレアに「仕事にも行けないんだし、いいバンを買って、国中を旅して、いろんなものを見て暮らそうよ」と言ったんです。

すると、妻のクレアは笑って、「SNSでバンライフを見たんでしょう?」と言いました。けれど、1週間後には、もうそんなことをする気も起きなくなったんです。おそらく、2日以上バンを使って生活したいわけではないと気がつきました。

これは、短期間、私に強く感染した模倣的な欲求でした。そして、SNSの力が、その瞬間に自分の人生をどうしたいかを考えさせたり、その考えを持たせたりすることに気づいたことで、私は目を覚ましたのです。

SNSに振り回されないためにできること

――しかし、SNSを完全に無視して生きるのは難しいですよね……。できるだけ影響を受けないためにはどうすればよいのでしょうか。

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そうやって意識することが、最初のステップです。衝動的に何かを買ったり、どこかで休暇をとったりしたくなったとき、少なくともその間に「一歩」があります。立ち止まって、待つのです。SNS上で境界線を設定することは、本当に重要です。

私がSNSでフォローしている人や物の中には、私を不安にさせるものがあることに気がつきました。それを正直に認められたとき、フォローをはずしたり、ブロックしたりすることができるようになりました。

FOMO(取り残されることへのおそれ)や、相手の発言を見逃すことへの恐怖があるので、本当に難しいことです。でも、私は境界線を設定するのがとても上手になりました。SNSは毎日使っていますが、自分に悪影響を及ぼすと思われるものには制限を設けることができるようになったのです。具体的には、さまざまなSNSが私に与える影響を視覚化したり、書き出したりして、自分への影響を制限する手段を講じています。

倉沢 美左 東洋経済 記者

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くらさわ みさ / Misa Kurasawa

米ニューヨーク大学ジャーナリズム学部/経済学部卒。東洋経済新報社ニューヨーク支局を経て、日本経済新聞社米州総局(ニューヨーク)の記者としてハイテク企業を中心に取材。米国に11年滞在後、2006年に東洋経済新報社入社。放送、電力業界などを担当する傍ら、米国のハイテク企業や経営者の取材も趣味的に続けている。2015年4月から東洋経済オンライン編集部に所属、2018年10月から副編集長。 中南米(とりわけブラジル)が好きで、「南米特集」を夢見ているが自分が現役中は難しい気がしている。歌も好き。

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