人間同士の「対立」が激しくなっている納得の理由 人と同じものが欲しくなる模倣の欲望の仕組み
大事なポイントは、私たちは自分で思っている以上にライバル意識が強い、ということです。例えば、2人兄弟の場合、弟は兄がやっていることや、望んでいることを見ています。そして、兄が自分の欲望のモデルとなって、自分自身の考え方や、自分の成功を測る方法に影響を与えます。こういうことは職場でも起こりますし、企業間でも、国同士でも、あらゆるものの間で起こります。
つまり、「模倣の欲望」のせいである意味、世界は私たちが思っている以上にライバル意識に満ちているのです。ビジネスの世界で2つの企業がつねに互いの顔色を窺っているように。私たちが対立するのはみんな違うから、と考えがちですが、よくよく見てみると、そこには模倣の欲望という原動力があり、私たちは互いにシグナルを求め合っている。それが対立の根本的な原因なのです。
保守とリベラルが「対立」するワケ
――つまり、政治の世界でも保守とリベラルは同じ方向を見ている、あるいは、同じモノを欲していると。にもかかわらず、お互いまったく違う方向へ向かうのはなぜでしょうか。
政治の世界では、しばしば完全にライバル関係にある2つの政党が、互いの政党の行動に影響を与えていることがあります。実際、アメリカではそういうニュースを連日目にします。
例えば、保守派が改革やある法案の成立を望めば、リベラル派はそれとは違うことを望まなければならない。これは、いわゆる「負の模倣」の一種です。彼らが何かを望むなら、私たちはその政党とは違うから同じモノは望めないというわけです。でもそれは、実は他者を基準にしていることに変わりはない。
私たちは通常、模倣というと、相手がやっていることを自分も真似るというポジティブな意味でしか考えませんが、実はネガティブな意味でも模倣は起きる。相手の行動を参考にしながら、自分は違うことをしなければならない、と考えるのです。
ライバルがこんなクルマを持っているなら、自分は同じクルマは絶対に持てない、というような発想です。政治からビジネスまで、あらゆる場面でそういうことが起こっている。政治の場合、両党とも、権力が欲しいんです。それが根本であり、根底にあることは変わらない。
その権力への欲求が、どんな客観的な物事よりも、共通の利益よりも重要になることがある。それがすべての意思決定の原動力となり、そもそも何のために政治家になったのか、ということを忘れてしまう、というわけです。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら