ハワイで開業、鉄道「スカイライン」には誰が乗る? 度重なる延期や建設費の高騰の末、ついに完成

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およそ20分後、1番列車は終点のイーストカポレイに到着した。その後も10分間隔で列車は運行を繰り返し、どの列車にも多数の客が乗っていた。老若男女。車いす利用者も多く見かけた。これもアメリカらしい。

どの途中駅でも列車に乗りにやってくる人の列が絶えなかった。途中駅のホオピリという駅は、4年前に訪れたときは駅前には畑が広がっていたが、宅地開発が始まっていた。それでも住宅が多いとは決して言えない。駅の改札前で人数を数えていたスタッフに聞くと、午後3時の時点で「駅にやってきたのは67人だけ。アロハスタジアム駅の賑わいとは大違い」と苦笑い。でもこれほど周辺に何もない駅に67人もやってきたというのはむしろすごい。

この鉄道路線は「Honolulu Rail Transit(ホノルル・レール・トランジット)」という名称で計画がスタートした。路線バスが「The Bus(ザ・バス)」というそのものズバリの愛称で呼ばれているため、鉄道には「The Train(ザ・トレイン)」とか「The Rail(ザ・レール)」といった愛称が付く可能性があった。ところが愛称は「Skyline(スカイライン)」に決まった。

ホノルル市のリック・ブランジャルディ市長は、スカイラインという愛称にした理由について、「全線で高架上を走るため、乗客は自動車よりもずっと高い目線で車窓の風景を眺めることができるということをわかりやすく示すため」と話す。乗客たちが何でもない風景に歓声を上げていたことを考えれば、ネーミングは的を得たものといえるだろう。

車両は日立製

路線の建設、事業運営を担うのはホノルル高速鉄道公社(HART)。日立製作所のグループ会社が車両製造や鉄道システム等を受注している。車両はデジタルを活用した信号・通信システムにより、無人で運行する。アメリカでは初めてのシステム。日立のアリステア・ドーマー副社長は「このシステムをアメリカの各都市に売り込みたい。スカイラインの開業はマーケティング的にも有効だ」と意気込む。ホノルルといえば、日立の企業CM「この木なんの木」で有名な「日立の樹」があることでも知られる。ドーマー副社長に「日立の樹とスカイライン。日立を象徴するものが2つになりましたね」と聞いてみたら、「日本人はハワイが好きだが、鉄道も好き。日本人がハワイに来れば、好きなことが2つ楽しめるよ」と返された。

HARTのロリ・カヒキナCEOは、「日立とは何度もお互いにバトルをしてきた」と、開業式典の挨拶でこんな話を披露した。「今日だけはリラックス。明日からまた、ハードワークの日々が始まる」。式典の後、カヒキナCEOはスタッフと同じ制服に着替え、1番列車に乗る人たちを出迎えた。

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