日立の「イタリア鉄道工場」どんな車両を製造中? 主力製品は高速列車、環境配慮ローカル車両も
現在の営業最高速度は時速300km。設計最高時速は400kmで、試運転では2016年2月26日未明にイタリア国内最高記録となる時速393.8kmを達成している。
当初はイタリアの旅客列車運行会社・トレニタリアの国内列車向けとして8両編成50本が発注された。その後、増発や同社がフランス、スペインでの運行に参入するため、数度にわたって追加発注されている。現在は84本が営業中、もしくは営業へ向けた準備中となっており、工場内ではスペイン向けの車両がまさに製造中であった。
ヨーロッパ域内における鉄道市場の成長は著しく、各国でさらなる列車の増発が期待される。トレニタリアは、現在ドイツへの乗り入れに向けて準備を進めており、具体化した段階で追加発注されることは間違いないだろう。また、現在13両編成58本が運用中の前世代の高速列車ETR500型は、最初の編成が製造された1996年から25年以上が経過しており、いずれ置き換えの話が出てくるはずだ。
一方、船に車両を積んで航送しているイタリア本土とシチリア島を結ぶルート向けとして4両編成仕様の計画もあるが、こちらは技術的な課題を克服する必要がある点と、本土とシチリア島内間の需要など各種の課題がクリアになるまで凍結されている。
現在はフランスやスペインで運行している車両も含めてトレニタリアだけが顧客だが、汎用性、運用適合性の高い同車は、理論上はヨーロッパの電化区間であればどこでも運行が可能なため、今後は他国の鉄道会社での採用が期待される。
欧州初の「トライブリッド」車両
もう一方の主力車種である「マサッチョ」は、電気・バッテリー・ディーゼルエンジンを組み合わせた“トライブリッド車両”として開発された。日立が製造するイギリスの都市間特急用800系列(Class800)車両では、電気とディーゼルを組み合わせたハイブリッド車両がすでに実用化され、これにバッテリーを組み合わせたトライブリッド仕様の開発も進められているが、マサッチョは一足先にこれを実用化した。3モードの営業運転用車両は、ヨーロッパで初めての実用化となる。
すでに3両編成・4両編成計20本がトレニタリアへ納入され、イタリア各地で営業運行を開始している。オプション契約を含めると、最大135本の大型契約となる。車体デザインは2階建て車両の「カラバッジョ」に似ているが、連接式を採用した低床構造なのが異なる。
バッテリーを動力源とした車両はJR九州のBEC819系「DENCHA」を筆頭に、日本ではすでに実用化されている技術だが、現状ではバッテリーだけでの航続距離には限界があり、比較的短区間での運用に限定されている。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら