結論から言うと、絵画のようなデザインを配したパッケージになりました。これは、「美術館でアートを見るときと、お風呂で考え事をしているときって少し似てるよね」というアイデアがベースになっています。
普段たくさんの人と関わって、数限りなく情報が押し寄せてくる。そうした生活の中で、周囲から遮断されて1人の時間を過ごせるお風呂という空間。アートを見ていろいろと考える時間。両方とも少し幸せな気分で、若い人も想像しやすいシチュエーションです。
これをシャンプーのパッケージで再現できないか。そうした発想から、アートが入ったエモーショナルなデザインになっています。
エモが生まれる3つの条件
人の共感を呼ぶエモを、どのように考えればいいのか。はっきりと定義することはできませんが、エモには3つの要素が入るものだと考えています。
①経験があること
エモに必要な共感は、「森林の香りの香水が欲しい」に対する「わかる」ではなく、「小学校の林間学校で森の中で遊んだ」「ああ、面白かったね」といった共感です。自分が経験してないことに対しては、共感したとしても「よさそうだな」と思うだけで、具体的に想像できません。自分にとっての「買う理由」にはならないわけです。
そのため、年代にも注意が必要です。Z世代に限らず、全世代の人がエモを感じることはありますが、拡散のためにはZ世代が経験したことでなければいけません。
②「ハッピー」を感じること
ネガティブな事象に対して、「うん、わかる」と共感しても、「欲しいな」とはなりません。エモはそのシチュエーションを想像したときに、ハッピーな気持ちになるものであることが必要です。
例えば「あそこのご飯屋さんおいしくないよね」「そうだね」という共感でエモは生まれません。一方で、「あそこのご飯屋さんおいしいよね」「そうだね」でも、抽象的でイメージができません。「あそこのご飯屋さんの福神漬けの量多くない? あれおいしいよね」「わかるー」というほど具体的であってこそ、ハッピーな共感になります。
ただし、ここで言うハッピーは、「超幸せ!」な状態ではありません。人によって幸せの姿は異なります。尖らせ過ぎると、共感を呼ぶことができません。日常の中で感じる小さな幸せを考えます。
③「コミュニケーション」があること
エモは、自分だけでは成立しないものです。あるシチュエーションがより多くの人に共感されるためには、コミュニケーションが内包されている必要があります。
大前提として、人はコミュニティの中で生きる動物です。消費の基準も自分だけのものではありません。本来、マーケティングとは人とのつながりを前提に置くべきです。
もちろん、1人で感じるハッピーもありますが、それは自分の中で完結するものです。コミュニケーションがあるからこそ広がりが生まれ、人に伝えたいと感じます。誰かといるときに、あるいは誰かといたときを思い出すことで感じることを、エモと考えます。
このように、エモとは、誰かとのコミュニケーションを通して、ハッピーを感じた経験です。わかりやすく言えば、誰かと一緒に笑っていたときと重なる部分。それが多くの人にとっての共感のポイントになります。そしてほかの人に伝えようという意識が生まれ、UGC(User Generated Content:ユーザー生成コンテンツ。ここでは報酬やインセンティブが発生しない口コミやレビューを指す)が広がっていきます。
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