Z世代の「エモい」を大人が共感するためのヒント 明確な定義はないが、押さえたいポイントは3つ

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人が商品を買う理由、あるいはUGCが生まれる理由として、「共感」が重要だといわれるようになっています。世の中の人全員に対して「めっちゃわかる!」という訴求をできればベストですが、現実問題として不可能です。

従来であれば商品の選択肢は限られ、消費者の価値観もある程度画一的だったので、大多数の共感をつくることができていました。しかしいまはみんなの生きてきた環境や考え方はバラバラで、物差しも人それぞれになっています。「めっちゃわかる!」が人によって異なるわけです。

その状況で「みんなの100点」を狙うなら、パーソナライズされた商品をたくさん打ち出すしかありません。しかし、それができる企業は、業種としてもリソースとしても限られています。

そこで、共感の度合いを下げて考えます。「めっちゃわかる!」と突き刺さるベネフィットではないけれども、暮らしの中で自分が使っているのが想像できて、少しハッピーになるような領域です。

感覚的な表現になりますが、「めっちゃわかる!」が100点だとしたら、「エモ」は60点くらいのイメージです。

例えば、「赤と青を組み合わせたパッケージの、ベネズエラ産のコーヒー」があったとします。ベネズエラに行ったことがあって、青と赤の組み合わせが大好きな人がいれば、「これ、俺のためのコーヒーじゃん!」となります。これが100点です。

一方で、「早起きした朝、出社する前にカフェで飲むコーヒー」であれば、「めちゃわかる!」とはなりませんが、ある程度は共感できると思います。これが60点です。エモを感じて商品を選んだ人も、買った瞬間にもうそのことは忘れているくらいの感覚だと思います。

もっと浅い、全員に共通する部分を取りに行こうとすると、薄過ぎて誰にも引っかかりません。自分事として受け取ってもらえるギリギリの範囲で、なるべく多くの数を取ることが理想です。

60点だからこそ人に拡散される

60点の共感を狙うことには、その訴求によって多くの人にリーチするということと同時に、見た人から別の人への拡散を設計する意味もあります。

ある商品を通してエモが発信される。それを見た人が「ああ、わかるわかる」と共感する。ある程度みんなに共通することだと感じるから、ほかの人にも伝える。そこでも「ああ、あるねー」と共感が生まれます。

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これが100点の共感だと、ほかの人に広がっていきません。ある分野について大好きな人から話を聞いたとき、「すごいね」とは言うものの、他人事で終わってしまうことはよくあります。もちろん、なかには「めっちゃわかる!」と言う人もいますが、数は少ない。そこで止まってしまいます。

共感をベースに二次拡散が起こるということは、SNSなどの「いいね!」の文化に近いように感じます。現在の「いいね!」は打算的になっていると感じますが、本来は共感を示すための仕組みだったのだと思います。自分の共感を人に伝えたいというのは、人が本来的に持っている感覚なのかもしれません。

今瀧 健登 僕と私と株式会社CEO、一般社団法人Z世代代表、Z世代の企画屋

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いまたき けんと / Kento Imataki

1997年生まれ、大阪府出身。横浜国立大学在学中に起業。花屋のコンサルティングやグラフィックデザインを担う。2020年、大学卒業後に教育コンサルティング会社に就職。同年に「僕と私と株式会社」を設立し、Z世代向けのマーケティング・企画UXを専門に事業を展開する。プロデュースしたマッチングアプリ「タップル」の公式TikTokアカウントでは、開設1年でフォロワー約35万人、総再生回数は2億回を突破している(2023年3月末現在)。
「NewsPicks」 U-30プロピッカー、「日経クロストレンド」での連載のほか、Z世代の代表として多数のメディアに出演。

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