北欧にインフレ過熱もたらした「ビヨンセ」の凄み 物価上昇の裏に通貨安とスーパースター

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2016年以来のソロツアーとなるビヨンセの「ルネッサンス・ワールド・ツアー」は5月10日にストックホルムで始まり、5万人収容のアリーナで2晩にわたって行われた。世界中のファンが有利な為替レートを利用し、例えばアメリカやイギリスよりも安いチケットを購入するために飛行機で訪れた。

グラーン氏は電子メールで、インフレ率の高まりをビヨンセのせいにするつもりはないが、「彼女のパフォーマンスと、スウェーデンで彼女のパフォーマンスを見たいという世界的な需要がインフレに少し拍車をかけたようだ」と述べた。

また、スウェーデンの通貨クローナの安さが、チケット代の安さにつながり、需要を膨らませたのだろうとも付け加えた。

「インフレへの主な影響は、ファンが宿泊場所を必要としたことから生じた」と同氏は述べた。ファンは公演会場から60キロメートル以上離れたホテルにまで押し寄せたという。ただ、料金は6月から元に戻っているため、影響は短期間にとどまるだろう。

2017年にはサッカー決勝で同様の現象

グラーン氏によると、今回のような物価上昇効果は「非常に珍しい」ものではあるものの、スウェーデンでは2017年に外国チームがサッカーの試合の決勝を行ったときに、ホテル料金に同様のインフレ効果が見られたことがある。

「だから、珍しいことではあるが、前例がないわけではない」とグラーン氏。

スウェーデン統計局の統計学者カール・マルテンソン氏は、「ビヨンセは、公演を行った週にストックホルムのホテル料金に影響を与えたと思われる」とする一方で、「スウェーデンの5月のインフレ率に著しい影響を与えてはいないはずだ」とも述べた。

(執筆:Eshe Nelson記者)
(C)2023 The New York Times

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