「ナチスに人生を狂わされた」公証人の心の拠り所 映画『ナチスに仕掛けたチェスゲーム』の見所
1938年3月、ナチスドイツに併合されたオーストリアは混迷を極めていた。そんな中、ひとりの公証人がナチスに軟禁される。想像を絶する過酷な日々の中、彼が心の拠り所にしたのは1冊のチェスの本だった――。
ナチスの台頭で、反ユダヤ主義が世界中に蔓延していく中、命をかけてナチスに抗議したオーストリアの作家、シュテファン・ツヴァイク。そんな彼が最期に完成させた世界的ベストセラー小説『チェスの話』を映画化した『ナチスに仕掛けたチェスゲーム』が7月21日よりシネマート新宿ほかにて全国順次公開となる。
命をかけてナチスに抗議
1881年に、ウィーンの裕福なユダヤ系の家庭に生まれたシュテファン・ツヴァイクは、第1次世界大戦時に連帯を表明した同志ロマン・ロランらとともに反戦のメッセージを強く打ち出し続けた作家だった。
その後、1930年代に入り、ナチスの反ユダヤ主義がオーストリアにも影を落とすようになると、1934年にイギリスに亡命。その後もアメリカ、ブラジルなど、世界各国を転々としながら、次々と著作を発表した。
本作の原作となる『チェスの話』を執筆したのは1942年のことだが、自らのアイデンティティを育んだ自由な文化が戦争によって次々と失われていくことに絶望した彼は、本作が完成した後に自ら死を選んだ。
ツヴァイクにとってはこれが小説としては最期の作品となったが、平和と芸術をこよなく愛した彼が、命をかけてナチスに抗議した書として、現代でも読み継がれる世界的ベストセラーとなっている。
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