「女性なくして成長なし」 目覚め始めた日本企業


 ベネッセコーポレーションで最大の営業利益を稼ぎ出す「進研ゼミ中学講座」の執行役員に05年、36歳で就任したのが成島由美氏だ。従業員約2900名の6割が女性のベネッセでは、「女性だから」優遇されることはありえない。成島氏は入社3年目に中3講座英語リーダーとして継続率・受講者数ともに過去最高を記録。高2講座英語リーダー、小6講座編集長時代も継続率などで記録を更新するなどつねに結果を出してきた。
 
 最大の転機は入社10年目に訪れた。進研ゼミ屋台骨の中学講座で毎年約10万人ずつ在籍者が減少し、ベネッセは創立以来最大の危機を迎えていた。そこで白羽の矢が立ったのが成島氏。上司から「お前でダメなら通信教育をあきらめる」と口説かれ、02年に中学ゼミ統括責任者に。「売るもの、売る日、すべてを変える」という意気込みで、中1~中3の各編集部に成果を競わせる全員参加型の組織へ改革、進研ゼミを選ばない顧客の理由を徹底的に聞き取った。その結果、学力別コース制の導入や、2週間かかっていた添削期間を最速2日間に短縮するなどして、生徒減少を止めた。

 03年の出産時は改革の真っ最中。産休は2カ月半だけで、その間もメールで指示を出し続けた。「部下からは臨月のほうが頭が冴えていると言われた」と笑う。成島氏の原動力は女性部下の励ましだ。「若さと夫と子どもとキャリア。全部持っているのは成島さんだけなんですよ」と言われる。「辞めようかなと思うこともあるが、キャリアと結婚、子育ては両立するんだよという夢を持たせてあげたい」と”男気”を見せる。

「山が嫌う」と言われた土木にも女性が進出

 女性比率の低い建設業界。鹿島建設の土木技術部・天野玲子部長(技術開発促進グループ長)は、女性土木技術者のパイオニアだ。東大土木工学科を女性で初めて卒業し、鹿島初の女性総合職となった。現在は部長職を務めるが、女性管理職はゼネコン業界でも極めてまれだ。

 黒部ダム建設を描いた映画『黒部の太陽』に感激し、土木系に進学した。だが、就職活動で建設会社を回っても門前払い。ただ1社試験をしてくれた鹿島に1980年に入社すると、技術研究所で土質やコンクリート構造の研究を命じられた。

 あこがれのダム工事とは部署が違ったが、とにかく「土木が好き」。後輩の女性研究者と切磋琢磨しつつ、橋脚関連の技術開発などで社長賞を5度受賞。社外でも土木学会奨励賞などを獲得した。「研究者の白衣を着てしまえばみな同じ。女性だからという待遇の差はなかった」。

 95年に起きた阪神・淡路大震災の復興支援では、本社で現場の建造物の破損状況などの情報を分析し、応急工事の必要性などを判断する業務に従事。07年3月まで3年間、母校・東大の都市基盤安全工学国際研究センターで客員教授も兼務。ハードな生活を支えるのは「気持ちの切り替え」。将来は土木部門のトータルマネジメントに意欲を燃やす。

 一方、かつて「女性がトンネルに入ると山の神が嫉妬する」などと言われたダム建設や道路工事など土木の現場では依然として女性の技術者は少ない。そんな中、中堅ゼネコン・不動テトラの技術管理士、赤井洋子さんは07年9月に高波を受けて崩落した神奈川県・西湘バイパスの復旧関連工事に携わる。消波堤などを設置して道路復旧工事の足掛かりを作る。午前5時から午後9時ごろまで激務が続くが、「この仕事の醍醐味は達成感。きっと女性でも充実感が得られるはず」(赤井氏)。時代は確実に変わっている。
(週刊東洋経済編集部)
(2月7日には仕事だけではない生き方を選んだ男性たちを紹介します)

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