仏「鉄道で2時間半なら飛行機NG」政策への疑問 CO2削減量はわずか、「政治的パフォーマンス」か

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フランス民間航空局の試算によると、今回の国内航空便廃止で削減できる二酸化炭素排出量は年間5万5000トンで、地球温暖化に対する効果は極めて限定的と言わざるをえない。

2019年の数値に当てはめると、これは国内線全体の二酸化炭素排出量210万トンの約2.6%、国際線を含めた航空総排出量2340万トンの0.23%、フランス全体の二酸化炭素総排出量4億3600万トンに対してはわずか0.01%にすぎない。これでは約束を果たしたことにはならない、との批判の声が上がっても仕方のない話だ。

各交通手段の二酸化炭素排出量との比較で見ると、国内線航空便の乗客は移動距離1km当たり平均して258g(換算値)の二酸化炭素を排出するのに対し、自動車はほぼ半分の147g、TGVは実に80分の1に相当する3.34gしか排出しない。

TGVデュプレックス TGV duplex
TGVの乗客1人1km当たり二酸化炭素排出量は国内線航空機の約80分の1だ(撮影:橋爪智之)

国全体で排出する二酸化炭素の量と比較すれば交通機関の排出量はすべて足しても決して多くないが、交通手段ごとの数値で比較すれば、やはり航空便の排出量が突出していることがわかる。もし、鉄道で代替可能な路線がほかにもあるとするなら、やはりもう少し踏み込んだ決定となってもよかったのではないかと考えずにはいられない。

一見厳しいが効果は薄い?

「鉄道で2時間半の距離は航空便廃止」というと、センセーショナルな報道の影響もあって、一見非常に厳しいルールのように感じられる。だが冷静な視点では、気候変動の言葉の下に実施された今回の政府令は、フランスの温室効果ガス排出量、さらに言えば同国の航空業界全体の排出量という観点でも極めて限定的な影響しか及ぼさない、効果の薄いものになるだろうとみられている。

ある意味で言えば、環境意識が高まる中で航空と鉄道の二酸化炭素排出量についてのイメージが「政治的パフォーマンス」に利用されただけだ、と捉えられても仕方ないと言えるかもしれない。

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橋爪 智之 欧州鉄道フォトライター

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はしづめ ともゆき / Tomoyuki Hashizume

1973年東京都生まれ。日本旅行作家協会 (JTWO)会員。主な寄稿先はダイヤモンド・ビッグ社、鉄道ジャーナル社(連載中)など。現在はチェコ共和国プラハ在住。

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