仏「鉄道で2時間半なら飛行機NG」政策への疑問 CO2削減量はわずか、「政治的パフォーマンス」か
フランス政府は2023年5月23日、同日に公布された政府令に基づき、列車を利用すれば2時間半以内で到達可能な都市間について、短距離航空便の運航を禁止すると発表した。この決定は、パリからナント、リヨン、ボルドーといった地方都市を結ぶ航空路線のうち、長距離路線との接続を除く便が廃止されることを意味し、各国で大きく報道された。
政府令では、同じ区間を走る列車が、飛行機で移動する乗客の需要を満たすのに十分な頻度や接続性を備え、航空便廃止後の乗客増を十分に吸収できるものでなければならない、と規定されている。先に挙げた3都市は、まさにパリから高速新線が延び、高速列車TGVが何往復も乗り入れている都市ばかりだ。
TGVを使った場合、これらの地方都市へは日帰りで旅をすることができ、目的地でも8時間くらい滞在することが可能となる。日帰り出張も十分可能という計算になる。
廃止になったのは3路線のみ
高速新線網が拡大するフランスでは、ほかにも鉄道で代替可能な都市はある。だが、蓋を開けてみれば廃止された航空路線はパリとボルドー、リヨン、ナント間の3路線だけにとどまった。しかもパリ側はオルリー空港発着便のみで、シャルル・ド・ゴール空港発着便については除外されることになった。
この政府令によって廃止される3路線の運航数は年間で5000便にも満たないため、年間20万便近くあるフランス国内の航空輸送量全体から見れば、その割合はわずか2.5%にすぎない。年間の国内線利用者数で見ると、1600万人のうち50万人分、約3.1%だ。
このうち2路線(パリ―ボルドー間とパリ―リヨン間)は、エールフランスが政府の要請によって廃止しており、パリ―ナント間については同社の判断によって廃止された。
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