エンジン外し電動化、西鉄「改造EVバス」の将来性 台湾メーカーの技術指導でグループ会社が製作

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西鉄のレトロフィット電気バス
西日本鉄道が福岡市内の片江自動車営業所に導入した「レトロフィット電気バス」(記者撮影)
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「脱炭素社会の実現」が叫ばれる中、世界的に進む電気自動車(EV)へのシフト。バスも各国でEV化が加速し、近年は日本でも見かける機会が少しずつ増えてきている。ほとんどは中国メーカー製だが、日本最大級のバス事業者としても知られる福岡県の大手私鉄、西日本鉄道(西鉄)はちょっと変わった電気バスの導入を進めている。既存のバスを改造した「レトロフィット電気バス」だ。

レトロフィットとは旧型の機械や装置を改造して新しい技術を組み込むことを指し、その名の通り既存のバスからディーゼルエンジンを取り外して電動化した車両だ。台湾メーカーで改造した車両が2022年6月から北九州市で運行しており、このほど初めて国内の自社グループで改造した2台を福岡市城南区の片江自動車営業所に導入。6月9日から九州随一の繁華街である天神や博多駅周辺などを走り始めた。

見た目は従来のバス同様

レトロフィット電気バスは従来車両の改造だけあって、緑色のラッピングこそ目立つものの、車体のデザイン自体は街中を走っているやや古めの西鉄バスと同様だ。車内に入ると前側ドアの直後と運転席後ろに設置されたバッテリーパックのやや大きな箱が目立つが、座席などは交換していないため、乗り込んでも従来のバスとの違いに気づかない人も多いかもしれない。

レトロフィット電気バスの車内
車内は従来のバスとほとんど変わらない(記者撮影)

だが、動き出すと「電気バスらしさ」を実感できる。当然ながらエンジン音はまったくせず、車内に聞こえるのはモーターの静かな走行音と空調の音だけ。信号などで停止する際、ディーゼルのバスはアイドリングストップしない限りエンジンの音が響き続けるが、電気バスは停まってしまえばほぼ無音だ。CO2の排出量は、ディーゼルのバスと比べて52%削減できるという。

メカニズムが大きく変わった一方、運転操作の感覚はほとんど従来のバスと変わりないという。営業運転開始に先駆けて試走した運転手は、「今日初めて運転したが、まったく違和感なく『普通のバス』として運転できる」と語った。

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