日ハム新球場付近に建設「新駅計画」見直しの背景 建設費が4割増しの125億円に、自治体は当惑
このボールパーク新駅は、北広島市がJR北海道に対して設置を要望した請願駅で、建設費用の全額が自治体負担だ。
JR北海道は、エスコンフィールド北海道の開業が迫った2023年2月になり突如、北広島市に対して、人件費や資材価格の高騰を理由に、新駅設置費用の増額を要求した。その金額は当初の約4割増しとなる「最大で125億円」とされた。
これを受けて北広島市は、「その工費での合意は難しい」とし、上野正三市長は、2月の市議会で新駅の設置について「JRへ工費の削減と工期の短縮を求める」と答弁をする事態となった。こうした動きを受け、JR北海道の綿貫泰之社長は、3月の記者会見の場で、新駅の設置について「今の場所で設計見直しをしても大きなコスト削減にはならない」「工費圧縮に向け場所をずらすことを含め再設計」と表明し今に至るが、肝心の利用者は置き去りのままだ。
首都圏の新駅建設費に迫る
各地の都市近郊での新駅設置費用は、一般的にどの程度の金額となるのだろうか。近年開業した主だったJR線の新駅整備の事業費を調べてみたところ、事業費が100億円を超えるのは首都圏の新駅整備くらいで、それ以外の地方都市圏は高くても50億円以内に収まっている。突出して高額なのは、JR山手線の高輪ゲートウェイ駅の192億円であるが、それ以外は京阪神や名古屋都市圏の新駅もおおむね50億円以内で、九州の福岡や熊本都市圏の新駅に至っては25億円以下だ。
JR北海道のボールパーク新駅の事業費は、当初計画の80億~90億円でも高額であるが、新たに示された125億円は、千葉市の幕張新都心に今年開業した幕張豊砂駅に迫るものとなっている。
こうした現状に対し、交通コンサルタントの阿部等氏は、「北広島駅隣の島松駅の待避線を活用して臨時列車の折り返しを行えば、2駅分列車を回送する必要は生じるが、新駅の設備は130mの対向式ホーム2面のみに簡素化でき、工費は20億円程度に、工期は2年に大幅に圧縮できる」と力説する。
JR千歳線の島松駅には、貨物列車が退避できる長さ400mの待避線があり、「信号システムを改修すれば6両編成の電車を3編成留置可能で折り返し運転もできる」。
さらに、1997年頃までは、駅に隣接した日本石油札幌油槽所向けの貨物列車の発着があったほか、国鉄時代には陸上自衛隊島松駐屯地への専用鉄道も分岐していたことから駅構内は広く、かつて貨物駅だったスペースが遊休地となっている。こうしたことから、阿部氏は「このスペースに留置線と乗務員詰所を新設することで、多数の臨時列車を最低限の回送で低コストに運行できるようになる」という。
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