「助言がスルーされる」上司に共通する致命的原因 「面倒見の良い管理職」が忘れがちな1つのこと

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また、相手のスキルが不足しているときも、指摘を受け取れる状態ではないことがあります。「二度と同じミスを繰り返さないで」と伝えたとしても、相手が仕事に必要なスキルを持っていなければ、相手は変われる状態にないので、いつまでもミスが繰り返されるでしょう。

ミスが続けば、お互いの信頼関係に溝が生まれ、心理的安全性にも悪影響を及ぼします。この場合、仕事をミスなく遂行するために必要なスキルを相手が身につけられるようサポートすることが、まずやるべきことと言えます。

長期的な視点からもタイミングを見計らう

あるいは、こんなケースもあるでしょう。

もっと活躍してほしいメンバーがいるものの、本人にはその気がない様子。昇進試験を受けてみるように勧めたけれど、「私、そんなに上昇志向がないので、昇進試験は受けたくありません」と素っ気ない返事が返ってくる。あるいは、プロジェクトリーダーに推薦しようとしたら断られた。このようなメンバーの態度に歯がゆい思いをしているマネジャーも少なくないでしょう。

ここで、「せっかく目をかけてやっているのに、あいつはやる気がない。恩知らずな奴だ」などと決めつけてしまうのは、相手のことを尊重しているとは言えません。本人がなぜマネジャーの勧めを断るのかは、聞いてみないとわかりません。もしかしたら、家庭の事情で今は仕事にアクセルを踏めない状態かもしれないし、仕事よりもプライベートを充実させたいと考えているのかもしれません。だとしたら、本人にとって、「今はそのタイミングではない」ということでしょう。

キャリアについて話をする場合も、相手がそれを望んでいるのかは見極める必要があります。そもそもキャリアの話なんて興味ないし、悩みもない、コツコツ働いてあと数年で会社を辞めようと考えている人に、「あなたは10年後にどうなりたいんですか?」とたずねても、キャリア相談の押しつけにしかならず、相手にネガティブなプレッシャーを与えてしまいます。

あるいは、「そんな質問をして、何か裏があるのだろうか。異動させたいのかな、それとも辞めさせたいのかな」と相手に疑念や不安を抱かせることになり、心理的安全性をおびやかしかねません。それは意図するところではありません。

今はキャリアについて関心がなくても、状況はつねに変化します。人の気持ちも変化します。今は何らかの理由があって仕事をあまり頑張りたくないけれど、時間がたって状況が変われば、「仕事で新しい挑戦をしたい」と思うときがやってこないとは限りません。

「わかりました。今は家庭の事情で昇進試験を受ける状況ではないのですね。では、家族の問題が落ち着いた頃、来期にまたこの話をしましょう」

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