日本郵政「正社員の"有休削減"」が示す重たい意味 「同一労働同一賃金」で労働条件の引き下げはOK?

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しかし、労働組合がない会社の場合は、労働者代表との合意といったような、包括的な合意による労働条件の切り下げは許されません。労働者1人ひとりとの「個別」の合意が原則となります。その根拠は、労働契約法第8条です。

■労働契約法第8条
労働者及び使用者は、その合意により、労働契約の内容である労働条件を変更することができる。

すなわち、個々の労働者と入社時に合意した労働条件は、本人の同意が無い限り、切り下げることはできません(本人が加盟する労働組合との労働協約締結により切り下げるのは、あくまで例外)。

今回の日本郵政グループのケースでいえば、労働条件通知書や雇用契約書で付与することが明記されている休暇制度は、会社側の判断だけで、休暇をなくしたり、日数を減らしたりすることはできないということです。

また、休暇に関しては、労働条件通知書や雇用契約書に、「就業規則定めによる」と書かれていることも実務上は多いですが、この場合であっても、同様に、会社は就業規則を書き換えることによって、一方的に休暇日数を減らすことはできません。

その根拠は、労働契約法第9条です。

■労働契約法第9条
使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできない。

不利益変更が「有効」になる余地はある

就業規則は会社側が作成し、労働基準監督所へ届出る際、労働者代表の「意見書を聞く」ことは必要とされていますが、内容に対する「同意」までは必要とされていません。

ですから、就業規則を変更すれば、会社は、労働条件をいかようにでも変更できると認識されがちです。しかし、法的には、この労働契約法第9条によって、就業規則を労働者にとって不利益内容に変更する場合は、雇用契約書や労働条件通知書に記載された労働条件の変更時と同様、変更によって不利益を受ける労働者の個別同意が必要とされているのです。

ただし、例外として、労働契約法第10条について把握しておく必要があります。

■労働契約法第10条
使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする。

就業規則は、多数の労働者を画一的に管理するためのルールであるため、就業規則の不利益変更において、つねに、全労働者から個別同意を取り付けることは、現実的ではありません。

そこで、労働契約法第10条では、労働者の個別同意が無い場合でも、

①変更内容を周知していること

②不利益変更の内容や背景が社会通念上相当性があること

③労使の協議など、変更のプロセスが合理的であること

という要件を満たせば、労働者の個別同意を得なかったり、一部の労働者が不同意を示しているような状況においても、就業規則の変更による労働条件の不利益変更は有効になる余地があるとしています。

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