カエル騒動も…異物混入で生き残る企業の共通点 混入ゼロにはできない中、問われる対応力

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まるか食品「ペヤング」とマクドナルドの場合

2014年12月、まるか食品のインスタント焼きそば「ペヤング」について、ひとりの消費者がTwitterにゴキブリ混入の写真を投稿した。途端にその情報は拡散した。

投稿の翌々日、まるか食品は、製造ラインが同じ同商品4万6000個の自主回収と生産停止を発表した。さらに投稿から9日後には、同社の全工場の生産を停止し、対象商品の販売中止を決めた。

原因特定を急ぐと同時に、再発防止のための国際基準の食品安全システムの構築を進め、製造ラインの監視体制も徹底化させた。

「ペヤング」は、2015年5月に生産が再開され、6月から再び店頭に並ぶこととなった。

徹底した衛生対策への評価と、顧客の同商品への待望感が相まって、再発売直後から商品販売は好調で、問題発覚前の2倍程度の売り上げを記録した。<参考>「ペヤング事件」とは、いったい何だったのか

もうひとつの事例が、同じ年の2014年と翌年の2015年にわたって起きた、マクドナルドの相次ぐ異物混入事件である。

2014年に「チキンマックナゲット」の材料の仕入れ先の中国の工場で期限切れ鶏肉を使用していたことが発覚、一時は販売を停止するという事案が発覚した。

その後、商品にビニール片、プラスチック片、人の歯などが混入するなど、異物混入が相次いで確認された。それにより、深刻な客離れが起き、2014年12月期、2015年12月期の日本マクドナルドHDの連結決算の最終損益は2期連続の赤字、2015年12月期は上場来最大の赤字を記録する結果となった。

その後、マクドナルド社は衛生管理を徹底させるだけでなく、顧客の声を積極的に聞いていく取り組みを始動した。全国47都道府県の店舗を訪れて352人の母親と対話をする「タウンミーティングwithママ」を実施したり、店舗アンケートアプリ「KODO」を導入して顧客の声を吸い上げる仕組みを構築したり――という取り組みを行った。

最終的には、衛生管理をはるかに超え、顧客の声を生かして、メニューやサービス、店舗の改善までを実行し、顧客からの信頼を取り戻し、V字回復を果たすに至っている。

ちょうどこの時期は、SNSが広く普及しており、最初の「炎上」も、その後の「信頼回復」もSNSによって加速された、SNS時代ならではの現象だったと言ってよいだろう。

異物混入への対応に限らず、

① スピード感をもって対応する

② 「過剰」とも言えるくらいの誠実な対応をする

というのが、リスクマネジメントにおいて重要な点である。さらに、経済化したリスクへの対策にとどまらず、これをきっかけに、

③ 商品・サービスの改革を行い、ピンチをチャンスに変えていく

ということが重要になる。

異物混入等の「不祥事」は、実は企業が自社の管理体制、商品・サービスのあり方を見直すチャンスともなりえるのだ。

西山 守 マーケティングコンサルタント、桜美林大学ビジネスマネジメント学群准教授

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にしやま まもる / Mamoru Nishiyama

1971年、鳥取県生まれ。大手広告会社に19年勤務。その後、マーケティングコンサルタントとして独立。2021年4月より桜美林大学ビジネスマネジメント学群准教授に就任。「東洋経済オンラインアワード2023」ニューウェーブ賞受賞。テレビ出演、メディア取材多数。著書に単著『話題を生み出す「しくみ」のつくり方』(宣伝会議)、共著『炎上に負けないクチコミ活用マーケティング』(彩流社)などがある。

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