G7で大活躍、JR西「観光船シースピカ」誕生の秘密 地元海運会社と共同開発し瀬戸内海クルーズ

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さらに、JR西日本グループのベンチャーキャピタルと瀬戸内海汽船のグループ会社が共同で設立・出資した新会社が新たな船舶を所有し、瀬戸内海汽船に貸し出すというスキームも決まった。

建造費用の捻出では、国もひと肌脱いだ。国内向け船舶の建設に際して資金面の支援が得られる鉄道建設・運輸施設整備支援機構の「共有建造制度」はそれまで旅客船や貨物船に限られていたが、新たにクルーズ船も対象となり、今回の船舶がその適用第1号となったのだ。

船の名称はシースピカに決まった。夜空に輝く乙女座の恒星「スピカ」に由来する。デザインを手がけるのは川西康之氏。長距離列車「WEST EXPRESS(ウエストエクスプレス)銀河」のデザインでも知られており、JR西日本が全幅の信頼を寄せるデザイナーだ。

2020年夏をめどに運航開始することも決まった。2020年夏といえば東京オリンピックの開催が予定されており、多くの訪日客の集客も可能となる。2020年秋にはまたも広島DCの開催も決まっている。タイミングとしては申し分なかったが、新型コロナウイルス感染症の蔓延という想定外の事態に見舞われた。結局、予定よりやや遅れて2020年9月に運航開始した。

真新しい船の外観は濃い青色と真っ白のボディーに、瀬戸内の夕焼けをイメージした金色がポイントで入っている。客席は窓側の座席を少し外側に向けるなどの工夫により、窓から景色を見やすくしている。屋外のデッキには瀬戸内海の島々をイメージしたというソファが設けられ、外国人観光客向けに多言語の案内も充実させた。

JR西日本は2020年10月から瀬戸内マリンビューを改造した新たな観光列車「etSETOra(エトセトラ)」を広島―尾道間に導入した。コロナ禍が落ち着いた今夏以降、JR西日本はシースピカとエトセトラを組み合わせて、瀬戸内の新たな観光モデルの構築を狙っている。

観光列車と「新たな観光モデル」構築

1日の運航を終えたシースピカは、瀬戸内海に浮かぶ江田島の港の中で、呉市に面した小用港に停泊する。江田島の住民たちにとってシースピカはなじみ深い存在である。

しかし、通常は営業運航中のシースピカが江田島に立ち寄ることはない。残念ながらルートには選ばれていないのだ。

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