世界進出を果たした新人映画監督の「飛び込み力」 ビジネス書超えた「サードドア」に学ぶコミュ力
『世界で戦うフィルムたち』で実施した私のインタビューは、「この方と話したい」という方へプロデューサーと一緒に直談判したり、キャスティング会社を通して出演依頼をさせていただきました。
『サードドア』のアレックスのように、全ての出演者に対して、自らその方たちにアプローチして機会を切り拓いたわけではありません。
ただ、周りの方の協力を得てキャスティング交渉をしていただく以上、本当に作品に出ていただきたいのであれば、まずは自分の言葉をきちんとお伝えしなければいけないと思いました。
そこで、依頼したい方に対して「私はこういう理由で、この映画を作りたいんです」という思いの丈を綴った長文を書いてお送りしました。
それもあって、インタビューに応じてくださった方々は、みなさん私を応援してくださっているような感覚があり、本当に感動的な時間を味わわせていただきました。
依頼をするなら、アレックスのように事前に相手のことをしっかり調べて、相手と自分の共通点は何か、相手の興味のあるものは何か、そして自分はなぜその方と話がしたいのかを熟知しておくことは絶対に必要だと思います。
映画祭に応募するなら、その映画祭についてしっかり知るべきというのと同じですね。
表現の根底にある怒り
映画監督は本当に食べていけない職業です。映画をやらなくても生きていける、いや、映画なんてやらないほうが生きていけると思っています。それなのに、なぜ映画をやっているんでしょう(苦笑)。
ものすごく時間もお金もかかるし、面倒なのですが、やはり人に何かを伝えるメディアとして、自分にとっていちばん適しているものが映画なのだろうと思っています。
それから、私は、ずっと怒っているんです。『マイライフ、ママライフ』(2022年)では、なんで働く女性、働くお母さんたちが、こんなにも社会からいじめられなければならないんだという怒りが根底にありました。
『12ヶ月のカイ』(2023年)は、今までの価値観の中にない、新しく生まれるものに向けられる世の中の偏見に対する怒りがありましたし、今作『世界で戦うフィルムたち』は、そもそもなんでみんな、こうやって自分の作品を売り込んでいかないんだという怒りがあります。
私にとって、映画を売る時の失敗は、観てくださったお客様から、つまらなかったと言われることではないと思っています。面白いともつまらないとも感じられない無風の状態。これが失敗です。
予算に関係なく、どんな作品も、リアクションがあるということがいちばん大事なことですから、今後も無風状態を起こさない、どんなに小さくても刺激や発見を与える物語を作ることを常に考えて、作品づくりをしていきたいと思っています。
(構成:泉美 木蘭)
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