世界進出を果たした新人映画監督の「飛び込み力」 ビジネス書超えた「サードドア」に学ぶコミュ力
作品にとって最も重要なのがワールドプレミアです。上位の映画祭には必ずワールドプレミア規定があります。
例えば、日本のローカルの映画祭に応募して上映されてしまうと、その後で、ワールドプレミアが条件となっているカンヌに出品することはできなくなってしまうのです。
映画の世界は、どこで初上映するかで作品の行く末が決まると言われていますから、よく考えなければならないところです。
映画に込めた思いを語れるか
『世界で戦うフィルムたち』を見ていただければ、どうすれば世界に作品を届けることができるのかがわかりますし、同時に、こうやって失敗する可能性があるんだなということもわかると思います。
海外の映画祭に参加すると、上映後にQ&Aの時間があります。そこでは、自分の映画について多くを語らなければなりません。
言葉の壁もあり、私の場合はほとんどが一問一答になってしまいます。しかし、海外の監督さんの様子を見ると、1つの質問に対して流暢な英語で5~10分かけて回答しています。
映画本編ですでに2時間上映しているのに、まだこんなにも伝えたいことがあるのかと思わされます。それだけ自分の作品に対する思いや考え、伝えたいことがしっかりしているのです。
日本人の私は、中学・高校の教育で、端的にわかりやすく答えるという回答のやり方を植え付けられているのかもしれません。でも、もっと伝えられることがあるんじゃないかと、毎回思っています。
「作品を見てもらえればそれでいい」という考えの方も多いかと思いますが、やはりコミュニケーション能力は大切だと思います。私自身は細々と英語を勉強してきましたが、語学力以上に、伝えたい意志をしっかり持つことの重要性を海外の映画祭を通して学びました。
また、世界のお客様に作品を届けるということを成立させるには、それなりのレベルの物語である必要がありますから、作り手として、世界的な情報や教養、価値観などをいつも勉強しておく必要もあるとも思います。
閉じこもって、世の中に対して関心を開いていかない人も少なくありませんが、「もっと世界の人に見てもらう作品を作るんだ」と根本の考え方を変えると、モチベーションも高まり、作り方や学ぶ姿勢も変わっていくのではないでしょうか。
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