【喉の痛み・声がれ】注意したい咽頭の病気一覧 ウイルスや細菌感染が多いが、がんの可能性も

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「扁桃炎は細菌による感染がほとんどであり、抗菌薬がよく効きます。ただし、扁桃の周囲に炎症が広がる『扁桃周囲炎』や『扁桃周囲膿瘍(のうよう)』になると、さらに痛みは激しく、腫れもひどくなって口が開かなくなるなどの症状も出てきます。このような場合は薬だけでは対応が難しく、膿(うみ)がたまった部分を切開しなければならないこともあります」(櫻井さん)

同じ扁桃炎でも、若い人が喉の痛みに加え、首のリンパ節の腫れを伴う場合は、「伝染性単核球症」の可能性がある。ヘルペスウイルスの1つであるEBウイルスが原因で起こるもので、10~20代に多い。

「キスを介して唾液により感染するケースがほとんど。多くは軽い症状で自然に治りますが、一部の患者さんでは肝機能障害を発症することがあります」(櫻井さん)

喉や扁桃は赤くなく、炎症は見られないのに、喉に激しい痛みを感じるような場合は、「急性喉頭蓋(こうとうがい)炎」が疑われる。咽頭の下、肉眼では見えない喉頭蓋という部分に細菌感染が起こり、発症する。

喉頭蓋は喉頭のふたともいわれ、呼吸をしているときには開き、食べ物を飲み込むときには閉じて、食べ物が喉頭や気管へ入らないように防ぐ役割をしている。

思った以上に怖い「喉頭蓋炎」

実はこの喉頭蓋炎は思った以上に怖い病気だ。

「喉頭蓋が腫れると呼吸困難や気道の閉塞が起こり、命の危険がおよぶことがある。医師が見逃してはいけない代表的な病気の1つです」と櫻井さん。治療の基本は抗菌薬だが、気道の閉塞が起こった場合は気管切開や気道挿管をしなければならないことがある。

もう1つ怖い病気といえば、やはりがんだろう。なかでも注意が必要なのは、中咽頭がんだ。

「実をいうと、中咽頭がんでは喉の痛みはそれほどでもないのです。ほかの症状として、患部からの出血や口を開けにくい、舌を動かしにくい、などがあります。頸部リンパ節の腫れで気づく人も多いです」(櫻井さん)

中咽頭がんは従来、アルコールや喫煙を原因とするものが大多数を占めていたが、近年はちょっと違う。子宮頸がんの原因の1つの「HPV(ヒトパピローマウイルス)」の感染によって引き起こされるタイプが世界中で増えているというのだ。一般的な中咽頭がんの好発年齢は50~60代だが、HPVの感染が関係するものは、40代の若い患者も珍しくないという。

ただし、「早期発見できれば治りやすいがん」(櫻井さん)なので、違和感があったら早めに診てもらうことが勧められる。

ところで、新型コロナウイルス感染症でも、喉の痛みを訴える人は多いようだ。何か特徴はあるのだろうか?

櫻井さんに聞くと、「人それぞれで、咽頭痛を訴える人もいれば、喉頭の症状が強い人もいます。症状だけでは診断するのは難しく、PCR検査をしないとコロナかどうかの確定診断がつきません」と言う。症状の重さも、1週間程度でよくなる人から、喉頭の炎症が急速に悪化し、気管切開が必要になるケースまで報告されている。

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