脳がフル稼働するのは「ハラハラするとき」だった 過去の経験から「安全なこと、楽なこと」を好む

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あなたがハラハラするのは、どんなときでしょうか。それを探すのにお勧めなのが、「朝起きてから寝るまでの行動をリストアップする」という方法です。

無意識にハラハラすることは避けてしまうので、いつもの行動=ハラハラしない行動を挙げてみるのです。

自分の行動を洗いざらい書き出すと、好みや思考のパターンが浮き彫りになります。普段、気づかない間にいかに無意識の行動パターンに支配されているかがわかるはずです。

私のかつての行動の一部をご紹介すると、

セミナー会場に行く/受け付けをする/会場に入る/空いている席を探す/端っこの席に座る/セミナーを受ける/会場を出る/電車に乗る……。

この方法を実践すると、私が人を避けるために席を選んだり、人となるべく会話を交わさないでよいルートを選んでいたりしていたように、ハラハラとは逆の行動を見つけることができます。

いつもの行動パターンを変えて、意識的にハラハラすることは、脳にいつもと異なる影響を及ぼしてくれます。1日すべての行動をリストアップするのが大変なら、朝起きてから出社するまでなど、時間や場所を区切っても効果があります。

冴えない少年からハーバードの研究員に

ハラハラすることに気づいても、いきなり挑戦するのは難しいかもしれません。

そこで、一歩を踏み出すための提案があります。それは、いつも家で済ませているランチを「フカヒレを食べに行く」にしてみるのです。フカヒレ、というのは1つの例で、食べてみたいけど、ちょっとハードルが高いと感じているものに置き換えていただければけっこうです。

フカヒレは高いから無理だと思っていても、本気で探してみると、ランチタイムなら案外手ごろな価格で食べられる店が見つかるかもしれません。新しい経験が脳を刺激し、ランチの後は思いもつかなかったアイデアが生まれることもあるでしょう。

『ハーバードの研究員が教える脳が冴える33の習慣』(アスコム)。書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします

実は私はもともと、自分でもうんざりするような冴えない人間でした。子どものころは、勉強もスポーツも「中の下」に届くかどうかという、いわゆる“できない子”の典型。いつも口がポカーンと開いていて、周囲の大人たちから先行きを心配されるほどでした。そんな調子でしたから自信を持てるはずもなく、自分は何をやってもできない人間だと思い込んでいました。

不安が脳を変えると最初に気づいたのは、中学生のときでした。運動会の花形種目である1500メートル走の選手の1人が体調をくずし、どういうわけか代わりに私が走ることになったのです。周りは各クラスの精鋭たち。勝てるはずもありません。ですから、最初は最後尾を走っていました。ところが走っているうちにアドレナリンが吹き出すような感覚を覚え、気がつけば100人中、上位10位入賞を果たしてしまったのです。

その後も、不安な状況に直面するたびに、頭がいつもより冴えるのを感じ、無理だと思っていた結果が変わることを経験しました。

冴えない私ができたのですから、あなたもきっとできます。今日から、あえてハラハラすることをしてみませんか?

川﨑 康彦 医学博士。脳科学者

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かわさき やすひこ / Yasuhiko Kawasaki

元ハーバード大学医学大学院研究員。専門は神経生理学。佐賀大学医学部大学院神経生理学博士課程卒業。中国医科大学(旧満州医科大学)医学部卒業。研究員としてハーバード大学医学大学院に在籍中、論文がネイチャー関連誌にも掲載される。現在は、「多様な脳の共存、共感、共鳴を通して個々の意識と集合意識の成長」をテーマに研究活動を展開し、それらを通して社会に貢献していくコミュニティIBTA(Impact your Brain and Tuning them All)実現のための活動のほか、固定概念を覆して生き方を変えるためのメソッドをオンラインサロンで伝えている。

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