戦闘が一気に勃発「スーダン」なぜこうなったのか 交渉の一方で戦闘準備していた2人の将軍

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ダガロ司令官は、当時の悪名高い民兵組織「ジャンジャウィード」の指導者だった。

ダガロ司令官の働きは凄まじく、アル=バシール大統領は彼を個人的な執行者として採用し、冗談交じりに「私のプロテクター」と紹介し、新たに結成されたRSFのトップに任命した。ダガロ司令官は金採掘の利権と、イエメンにおける戦闘に数千人の軍隊を派遣し、アラブ首長国連邦から多額の報酬を得ることで富を築いた。

欧州連合(EU)の支援を受けながら、同氏の部隊はスーダンの長い国境を越えてくる移民を防いだ。ダガロ司令官自身、密入国の手引きで利益を得ている疑いがあったにもかかわらず、である。スーダン専門家のアレックス・デ・ワール氏は彼の経歴を「暴力のスペシャリストによる政治的起業の典型的な例」と評した。

欧米の高官は将軍らを持ち上げるように

2019年4月、民主化への期待を膨らませた革命で、デモ隊がアル=バシール大統領の退陣を求める中、それに呼応するように2人の将軍は大統領に牙をむいた。

しかし、その2カ月後、ブルハン将軍らは残った抗議者を一掃するために兵士を送り込み、少なくとも120人を殺害し、軍はこの悲惨な兆候を持って、アル=バシール大統領のように簡単に権力を譲るつもりはないというメッセージを示した。

このメッセージは、2021年10月、2人が力を合わせて政権を奪取し、民間の首相を追放したときに、さらに大きく響いた。

このクーデターは、わずか数時間前にブルハン将軍とダガロ司令官に会い、彼らが政権を取ることはないと確認したアメリカの特使、ジェフリー・フェルトマン氏にとって不意打ちとなるものであった。

しかし彼らは、欺瞞の代償を支払うことはほぼなかった。やがて、将軍たちは排斥されるどころか、彼らを権力から引き離そうとする欧米の高官たちから言い寄られるようになった。アメリカは、ダガロ司令官のペルシャ湾での経済的利益を狙って、制裁を科すとひそかに脅していたが、結局、制裁は科せられなかったと、この決定を知る元アメリカ政府高官は語った。この人物は、本記事に登場する他の関係者と同様に、敏感な政治を語るために匿名を条件に語っている。

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