「アジフライ専門店」じわり全国へ広がる意外な訳 アジの“聖地"長崎県松浦市の奮闘もあった

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それも「松浦といえばアジフライ」が定着したおかげだが、ここまでの道のりは平坦ではなかった。2018年1月に初当選した現松浦市長・友田吉泰さんは就任後、「松浦をアジフライの聖地にする」とのビジョンを掲げ、アジフライを打ち出して市のPRをスタート。当時から「アジフライの聖地 松浦」プロジェクトに関わってきた、松浦市役所 文化観光課 観光物産係 髙橋聡美さんは初期の頃をこう振り返る。

「市内約120の飲食店を1店舗ずつ回り、アジフライをフックにした町おこしへの協力を相談していました。当時は『松浦産アジが新鮮で美味しいのは当たり前』『今さらそれを打ち出しても響かないのでは』といった消極的な意見もありました。それでもなんとか20店舗の協力を得て2018年8月、松浦アジフライを食べられる店を掲載したアジフライマップ第1弾を発行したのが始まりです」(髙橋さん)

アジの味が濃いから美味しい

この動きと連動し同8月、福岡市天神の人気食堂「梅山鉄平食堂」で、松浦市とのコラボイベント「AJIFRY AFFAIR」が開催された。松浦魚市場直送のアジフライをワンコインで食べられる3日限定の同イベントは大反響のうちに終わり、松浦市にとって大きなターニングポイントになったという。

2021年3月にも同様のコラボイベントが“復活”し、福岡の人々に松浦アジフライを大きく印象付けた。2020年2月には「アジフライセンターおむこさん」、2021年4月には「あじフライ食堂かば」、2022年7月には「食事 満福」、前出の「三陽食堂」と、福岡市内にアジフライ専門店が続々とオープンする流れができていった。

松浦市はその後も週末のイベントやPR活動を地道に続け、今や松浦アジフライ憲章を満たした市内の店舗は35店舗となっている(2023年5月時点)。

変わり種アジフライの一例。左から「松浦シティホテル〈松花〉」のアジフライおにぎらず、「旅亭吉乃や」のアジフライサンドイッチ(写真提供:松浦市)

「最近ではアジの半分はアジフライに、半分は刺身にしたり、アジフライをハンバーガーの具材にしたり、独自ソースを提供したりするなど、各店舗で工夫を凝らしている印象を受けます。この数年でより美味しくなっていると感じています。アジフライを食べに来られる方の中には、複数店舗を回って食べ比べをして楽しむ方もいると聞きます」(髙橋さん)

髙橋さん自身、松浦市で生まれ育ち、昔からアジと親しんできたが、今でも松浦アジフライを日常的に食べていて、その美味しさを「洒落ではありませんが(笑)アジそのものの味が濃く、ソースに負けないしっかりした味が魅力です。アジフライといえばソースなどをつけるイメージがあるかもしれませんが、最初はそのままで味わっていただきたい」と語る。

松浦市から福岡市へ、そして全国へ。松浦アジフライはこの先も全国へ広がっていきそうだ。

池田 園子 ライター、編集者

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いけだ そのこ / Sonoko Ikeda

編集プロダクション「プレスラボ」代表。1986年、岡山県生まれ。中央大学卒業後、楽天、リアルワールドを経てフリー編集者・ライターに。その後「DRESS」編集長を務め、現職。持続可能なビジネスを行う企業や個人の取材を続けている。

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