「アジフライ専門店」じわり全国へ広がる意外な訳 アジの“聖地"長崎県松浦市の奮闘もあった

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アジの取扱量、アジフライの製造規模共に国内トップクラスの三陽は、全国の飲食店にアジフライを販売してきたが、2022年7月、冷凍自動販売機を設置して一般消費者向けの販売を開始し、人気を博している。

福岡市内6カ所に自社運営の「アジフライ自販機」を構える。地下鉄駅構内にある他メーカーの自販機でも取り扱いが始まるほど好評

その流れで“アジフライ専門食堂”として同月にオープンしたのが、先の三陽食堂である。宣伝をしなかったもののSNSで話題を集め、2023年6月頃には博多駅にも出店する勢いだ。toB向けや自販機の品と同じアジフライを食べられる店だが、美味しさの理由について新規事業開発担当の横山裕二さんはこう語る。

「松浦産アジは身が丸くてやわらかく、脂のりの良さが特徴だと感じています。弊社のアジフライは、刺身として食べられるほど鮮度のいい松浦産アジを加工し、生パン粉をつけた状態で凍らせています。工場のラインに入ってから15〜20分で処理し、新鮮さを保っています」(横山さん)

三陽の松浦工場は松浦魚市場から1kmもない場所にある。獲れたての松浦産アジを仕入れ後即工場へ運び、水揚げ当日に捌き、粉付けして凍結させる「ワンフローズン」の工程が特徴だ。一般的なアジフライは水揚げから包装まで一部の工程は国内外で行われるため、輸送や加工のタイミングで冷凍・解凍が繰り返され、仕入れから出荷まで3〜6カ月ほどかかることもザラにある。

「アジフライの聖地」になった松浦市

水揚げ後に即加工・一度の凍結を行うワンフローズンは、松浦産アジフライの鮮度の高さや美味しさのカギを握る要素であり、松浦市が「松浦アジフライの絶対ルール」として定める「松浦アジフライ憲章」のひとつ。

(松浦市Webサイトより)

同憲章は2019年4月27日、松浦市が「アジフライの聖地」(2020年12月に商標登録)と宣言した日に制定され、松浦市で水揚げされたアジ、または松浦市周辺海域で獲れたアジを使うこと、ノンフローズンまたはワンフローズンでの提供が松浦アジフライであることなどを規定している。

2023年4月で聖地宣言から丸4年を迎える松浦市は、本場のアジフライを求めて福岡を中心とした隣県からはもちろん、関西や北海道からも観光客が訪れる街になった。佐世保市や平戸市、伊万里市などの観光地として知られた街に行く途中の経由地ではなく、松浦市を目がけて来る人が増えている。コロナ禍以前のデータだが、2017年の観光客数は80万2400人だったが、2019年は93万500人と躍進している。

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