「アジフライ専門店」じわり全国へ広がる意外な訳 アジの“聖地"長崎県松浦市の奮闘もあった

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松浦が不漁の場合は他の産地のアジを使うが、基本的には松浦産アジを使ってアジフライを提供する。2022年10月には「松浦アジフライ大使」に就任し、松浦市のギフトショップと組んで冷凍アジフライ「ALAYASHIKI AJIFRY」開発に携わるほど、松浦産アジとの縁が深い。

「友田吉泰市長が“アジフライの聖地”と宣言してから、漁師から魚市場で働く人、料理人を含めた加工事業者、各店舗……松浦アジフライに関わる市内の人たちが試行錯誤してきた経緯があります。

昨今、松浦アジフライが九州を飛び出し、全国で人気を集めるようになっているのは、そんな背景があると思います。全国どこで獲れるアジも美味しいですが、ここまでユニークな街やアジフライは唯一無二だと感じています」(池田さん)

福岡でもアジフライ専門店に行列

筆者が住み始めて1年になる福岡市にも、松浦産アジを用いたアジフライを食べられる店が複数ある。昨年秋頃「福岡で近年流行っているグルメは?」と地元の友人知人たちに聞くと、「松浦産アジで作るアジフライ」との答えが返ってくることが多かった。

常に長蛇の列ができる店も多いというので、先日、余裕を持って開店10分前に福岡市中央区長浜にある「三陽食堂」に行ってみると、予想通りすでに数人の客が待機していた。店内の販売機で「アジフライ定食」(880円)、「アジフライ食べ放題定食」(1100円)から欲を出して後者を選択。

食べ放題定食では3〜4枚追加する人が多いが、30枚追加したツワモノもいたとか……

運ばれてきたアジフライは開きではなく「フィレタイプ」。肉厚でふっくらしていて、上品な脂がたっぷりのっている。噛むと外のパン粉はサクサク、中の身はふんわりとしていて、調味料をつけなくてもアジそのものの甘みがじんわり広がるのがわかる。揚げ物なのに油っこくなく、かろやかさを感じる。

三陽食堂を運営するのは、漁業から養殖、水産物卸、水産物加工まで、水産業の一気通貫で知られる株式会社三陽だ。福岡市に本社を持ち、松浦市にも営業所や工場、冷蔵庫を構える。1991年の創業から長らくtoB向け事業を続けてきたが、創業30年を機にtoC向け新規事業を開始している。

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