「カマロ」生産終了を惜しむべきではない理由 歴史が示す「カマロ不屈の精神」は生き続ける

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もちろん、クーペ&コンバーチブルというボディバリエーションやV8エンジンの採用などの伝統は守られていた。日本への導入は2017年11月。来年での販売終了となれば、7年のモデルライフを送ったことになる。

ちょっと不良っぽい“近所の憧れのお兄さん”

個人的な印象ではあるが、カマロはいつの時代も「豊かで華やかなアメリカ」をイメージさせる存在であった。エクステリアデザインは、いつだって地を這うような、そして迫力あるものであり、ストレートな「カッコ良さ」にあふれていたのだ。

3代目 カマロ コンバーチブル Z28(写真:Chevrolet)

しかも、それが遠い存在ではなく、身近な価格で売られていた。ちょっと不良っぽいところもある、“近所の憧れのお兄さん”のような存在だ。それが、次世代の案内なしに終了するというから、一抹の寂しさを感じてしまう。

ちなみに今回の生産終了は、アメリカだけでなく世界を覆う「BEVシフト」や「電動化」といった「脱炭素」の流れの影響もあるはず。大排気量エンジンを搭載するスポーツカーは、それら今どきの流れに、真っ向から対峙する存在となるからだ。言ってみれば、これからはスポーツカーにきびしい時代となる。

しかも、「カマロ」は量販車だ。これも難しさに拍車をかける。スポーツカーらしい高性能な走りをBEVで再現しようとすれば、大容量のバッテリーとモーターが必要になる。

コルベットは2024年モデルでハイブリッドの「E-RAY」を投入(写真:Chevrolet)

現状のバッテリー価格は高止まりしているため、大容量バッテリーの使用は、そのまま車両価格の高騰を意味する。トップモデルであり少数生産のコルベットなら許されるかもしれない。しかし、量販モデルのカマロでは、現実的な価格が求められる。

「脱炭素」と「パフォーマンス」、そして「価格」のバランスは非常に難しい問題だ。しかし、振り返ってみれば、カマロはオイルショックや厳しくなる排ガス規制&燃費規制、リーマンショックなどの数々の難関を克服してきたクルマだ。

ゼネラル・モーターズは、次世代のカマロを諦めたわけではないという。超えるべきハードルは高いだろうが、なんとかそれをクリアした、新世代カマロの登場を期待するばかりだ。

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鈴木 ケンイチ モータージャーナリスト 

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すずき けんいち / Kenichi Suzuki

1966年生まれ。茨城県出身。國學院大学経済学部卒業後、雑誌編集者を経て独立。レース経験あり。年間3~4回の海外モーターショー取材を実施。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。

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