メガバンクが法人オーナーに的を絞る理由 「事業承継」に意外な商機あり

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「企業オーナーは60歳代後半になると急速に事業承継を進める。いま社長の平均年齢は60歳に近づいている。企業オーナーの承継がこれから本格化する。そのニーズに応える金融サービスが求められている」(メガバンクの融資担当幹部)

いま金融機関の間では、承継ニーズに応える営業に注力するところが増えている。昨年4月には、三井住友銀行が国内営業体制の大幅刷新を行い、法人向け営業と個人向け営業を一体化した法個一体型営業拠点エリアを設置した。法人オーナーは、企業の経営者であると同時に、多くの資産を持っていることが多い。その承継や運用ニーズに応えられるように組織を再編したのだ。

三井住友銀行は昨年、国内営業体制の大幅刷新を行った

三菱東京UFJ銀行も、こうした法人・個人の窓口を一元化した一体拠点の拡充を進めている。みずほ銀行はこのニーズに応える営業に、いち早く2004年から取り組んでいる。2015年度も法個一体営業を重点戦略として掲げ、一層の深掘りをする。直近の成功事例はこうだ。

地場の経済圏を支える名士にあたれ!

関東南部で年商1億円強の塾を経営している男性がいた。これまでのみずほだと、年商1億円程度の取引先に対する営業の優先順位はあまり高くはなかった。しかし、営業店の周囲のオーナーとの取引を今一度深めるように、との昨年度の本部方針を受けて、営業店の担当者は、その塾経営者のところにあらためて顔を出した。

経営者は「何だ、お前は。今まで全然来なかったじゃないか」と言いながらも、悪い気はしてなさそう。話をしているうちに、「塾の設備を入れ替えるから200万円ぐらい借りたい」という話がまとまった。信用保証協会を紹介し、さまざまなやり取りをしていくと、塾の周りに経営者の名前の付いたマンションがいくつもあることがわかった。経営者の資産は実に35億円超に及んでいた。信頼関係を深める中で、不動産融資の肩代わりや、資産運用商品の購入も進み、みずほと塾経営者の取引は一気に厚みを増した。

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