セブン&アイ「売上高10兆円超」でも消えない不安 最大の増益要因はアメリカでのガソリン販売
国内コンビニ事業の中核、セブンーイレブン・ジャパンの営業利益は前期比4.4%増の2328億円と増益だった。フェア商品の好調や自社企画商品の値上げの効果もあり、既存店売上高は同3.6%増を確保。コンビニの飽和が叫ばれる中で底力を発揮したといえる。
問題はやはり非コンビニ事業だ。総合スーパーなどを運営するイトーヨーカ堂の営業利益はわずか4億円(前期比75%減)。減損損失などの計上で最終損益は152億円の赤字と、グループの足を大きく引っ張っている構造は否めない。
百貨店を運営するそごう・西武も、人流回復の影響で営業損益は黒字化したものの、最終損益は依然として130億円の赤字だ。
固定費削減に向け「相当な痛み」が必要
こうした不採算事業は、たびたび市場からの攻撃対象になっている。アメリカの投資ファンド、バリューアクト・キャピタルはヨーカ堂の売却などを要求。直近では井阪隆一社長含む取締役4名に退任を求める株主提案を行っている。
バリューアクトからの要求に対して、セブン&アイも無策ではない。3月9日に公表した中期経営計画のアップデートでは、ヨーカ堂について、自社運営するアパレルからの完全撤退と地方店の追加撤退で、経営資源を「食」と首都圏に集中させるとした。
ヨーカ堂を中心とした首都圏のスーパー事業のEBITDA(利払い前・税引き前・償却前利益)を2025年度に550億円と、2022年度実績の3倍超まで伸ばすという新たな数値目標も発表している。しかしこの計画に対しては、「(退店などで)売り上げの低下が避けられない中、人件費などの固定費の部分で相当痛みを伴わないと達成は難しい」(JPモルガン証券の村田大郎アナリスト)と実効性を疑問視する声は多い。
一方のそごう・西武は、昨年11月に公表したアメリカの投資ファンド・フォートレス・インベストメント・グループへの売却交渉を進めているものの、今年3月には株式譲渡を「無期限延期」。労働組合や地権者との調整が難航している。あるグループの関係者は「実行予定日が未定だなんて、前代未聞。日付が守れない状況であればディールは実質破綻している」とあきれ顔で語る。売却が完了するかどうかも含めて、どのような経過をたどるかは極めて不透明だ。
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