正義と表裏一体の関係、「悪意」はなぜ存在するか 『悪意の科学』書評

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『悪意の科学 意地悪な行動はなぜ進化し社会を動かしているのか?』サイモン・マッカシー=ジョーンズ 著
悪意の科学 意地悪な行動はなぜ進化し社会を動かしているのか?(サイモン・マッカシー=ジョーンズ 著、プレシ南日子 訳/インターシフト/2420円/272ページ)
[著者プロフィル]Simon McCarthy-Jones/アイルランド・ダブリン大学の臨床心理学と神経心理学の准教授。さまざまな心理現象について研究を進めている。幻覚症状研究の世界的権威。多くのメディアに寄稿。ウェブサイト「The Conversation」上の論評は100万回以上閲覧されている。

インターネット掲示板やSNSの普及によって最も目につきやすくなった感情は、人々の悪意ではないだろうか。過度な誹謗中傷による痛ましい事件が起き、厳罰が科されるようになってなお、他人に心ない悪罵を投げつける者は後を絶たない。

人の心になぜ悪意が存在しているのか、悪意は社会にどう影響しているのか。この疑問に、本書は主に進化心理学の側面から迫っている。

この本では、悪意ある行動の定義を「他者を傷つけ害を与え、かつその過程で自分にも害が及ぶ行動」としている。自らは無傷で済ますのではなく、返り血を浴びることを知りながら、相手を切りつける行為を指すわけだ。

次ページ進化の過程で「悪意」はなぜ消えていかなかったのか
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