
氷川竜介(ひかわ・りゅうすけ)/アニメ・特撮研究家。1958年生まれ。大学在学時からアニメ誌上で執筆を始め、メーカー勤務を経て2001年独立。23年3月まで明治大学大学院特任教授を務めた。著書に『20年目のザンボット3』『細田守の世界』など。(撮影:今井康一)
サブカルチャーだったアニメが、今や世界に誇る国民文化に──。アニメ・特撮を論じて約半世紀、第一人者の研究家が語る、その発展の系譜とは。
──アニメ史の流れを「大づかみする試み」と冒頭に述べています。
不安がなかったわけではありません。インターネット上には多くの通称「警察」と呼ばれる人がいます。「あれに触れていない、これも触れていない」「記述が不正確だ」など、すべてをお見通しかのように判定する人たちです。日本のアニメ史をコンパクトにまとめる新書は、こうした熱心な人たちからの詮索にさらされるおそれがあります。
ただ、アニメを語ったり、作品をジャッジしたがったりする人はあふれていますが、意外に“幹”となるような知識はあまり共有されていない。アニメ・特撮の研究家として、その状況にもどかしさを感じてきました。
私は、2014年から最近まで明治大学大学院でアニメーション文化研究の教鞭を執っていました。学生に研究課題を与えると、「00年代以降にヒットを出したアニメ作家」をよく題材に挙げてくる。そして作品の新規性だとか、作家の特別な個性を証明しようと、いろいろな特徴を列挙してきます。
確かにそういう特徴はあるけど、私は、過去に別の作品でやっていた挑戦に似ている、映像表現として定番ではと思ってしまう。
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